映画 ふたりはプリキュア MaxHeart

2005/04/12 東映第1試写室
テレビで人気の美少女アクション・アニメの映画版。
『オズの魔法使』の安っぽいパクリ。by K. Hattori

 日曜朝の人気アニメ「ふたりはプリキュア MaxHeart」の映画版。主人公のキュアブラックこと美墨なぎさ、キュアホワイトこと雪城ほのか、シャイニールミナスこと九条ひかりの3人が、闇の世界の魔女に乗っ取られかけている「希望の園」を救おうと、異世界で大冒険を繰り広げるというテレビシリーズの番外編。もともと2004年2月から放送されていた「ふたりはプリキュア」というアニメがあり、「ふたりはプリキュア MaxHeart」はその続編として今年2月から始まった新シリーズ。映画は前回のシリーズも含めて今回が初めてだ。

 テレビでシリーズ放送されている人気番組の映画版は、テレビを見ていない人もある程度内容がつかめるように作ることが多い。キャラクターが広く知られている『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』などはもちろん、物語の前提となる世界に多少の知識が必要な『名探偵コナン』や『ワンピース』も、映画で初めてその世界に触れた人が戸惑わない工夫をしている。実写作品では『踊る大捜査線』が上手かった。しかし今回の『ふたりはプリキュア MaxHeart』は、主人公たちがそれまで活躍していた世界を離れて映画版独自の異世界に入り込むという筋立てにはなっているものの、やはりテレビを見ていない僕にはチンプンカンプンの内容だった。

 チンプンカンプンになる最大の原因は、お話がつまらないことにある。これは『オズの魔法使』の下手くそな焼き直しではないか。「オズの国」を「希望の園」に、「西の悪い魔女」を「闇の世界の魔女」に、「北の良い魔女グリンダ」を「希望の国の女王」に、「マンチキン」を「希望の国の妖精たち」に、「エメラルドシティ」を「ダイヤモンドライン」にしているだけではないのか。(闇の魔女の手下をしている大きなコウモリのような手下たちは、1939年の映画『オズの魔法使』でカットされたシーンに登場する翼の付いたサルに似ている!)こうした道具立てを借りた上で、ストーリーは善と悪が宝物の争奪戦をするという古めかしいパターンを踏襲している。『オズの魔法使』にはまだ、主人公の成長というドラマがあったんだけどなぁ。

 この軽薄なストーリーを埋めていくのは主人公たちのキャラクターしかないのだが、主人公たちの間には特にこれといった葛藤がないのは映画として極めて物足りない。仲間同士で喧嘩をしてからまた仲直りという、使い古され手垢の付いた、しかし強力な物語の核がなく、かといってそれにかわる強力な何かがあるわけでもない。映画のゲストキャラである妖精のスクエアが一応はその役目を担っているのだが、カエルのぬいぐるみみたいなこの妖精たちに、観客が感情移入するとは思えない。

 テレビ版のファンには主人公たちの活躍が大画面で観られるだけで楽しい映画かもしれないが、そうでない人には観る必要のない作品だ。

4月16日公開予定 丸の内東映1ほか全国東映系
配給:東映
2005年|1時間10分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.precure-movie.com/
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