ヘアスタイル

2005/04/08 映画美学校第2試写室
中島哲也監督がプロデュースした3話オムニバス映画。
監督は3人。主演はすべて浅見れいな。by K. Hattori

 『下妻物語』の中島哲也監督が企画・プロデュースして、3人の監督が3話オムニバスの映画を作った。主演は浅見れいな。すべてのエピソードに髪形にまつわるタイトルが付けられ、その髪形のヒロインが、その髪形に似つかわしい物語の主人公になるという趣向だ。以下、各エピソードの概略と感想。

 第1話「おさげの本屋」は、小さな古本屋で店番をする娘・鳩子に恋をした、内気な青年の物語。青年を演じるのは、山下敦弘監督や本田隆一監督の作品で常連の顔になっている山本浩司。ヒロインの父をB&Bの島田洋八が演じている。山本浩司が演じるシカオ青年の一人称で描かれた物語だ。店で扱っているのがマニア向けの古いエロ本やエロ雑誌で、それと店番の美少女や、なぜか店に現れるヤン君という留学生のミスマッチ。しかしこのミスマッチが、決定的な面白さにはなっていないと思う。監督は自主映画出身の岩田ユキ。

 第2話の「アフロアメリカン」は実験的なエピソード。スタジオの中に作った原色のニューヨーク、ブロンクスで起きる恋のドタバタを描いている。登場人物は全員が怪しい英単語まじりの日本語を猛スピードで話す。映画としてはユニークだが、テレビCMならこの程度のことはよくやっているかも。でも3つのエピソードの中では、これが一番元気があって面白かった。監督はハロルド松村。

 第3話の「マッシュルーム」は、高校時代に一方的に憧れていた先輩が事故で記憶喪失になっていることを知り、自分は彼の恋人だったと嘘をついた女の子の物語。記憶喪失の先輩を演じるのは、『がんばっていきまっしょい』の松尾政寿。記憶喪失という設定はもうさんざん使い古された気がするのだが、この映画はヒロインの「嘘」こそがモチーフなので、これはこれでいいのだろうか……。監督の宮野雅之は『下妻物語』の他にも、数多くの映画製作現場で助監督を務めていたベテラン。3つのエピソードの中では、これが一番オーソドックスな作りかも。でもオーソドックスな分だけ、お話のご都合主義が目立ってしまうのだなぁ。

 映画としては1話と3話が少し長めの短編映画で、第2話はオマケの幕間狂言みたいなものだろう。ヒロインを演じた浅見れいなは、エピソードごとにまるで違う表情を見せるのだが、どのエピソードもストーリーにリアリティが感じられず、彼女の演技もいいのか悪いのかよくわからなかった。映画を観ている側と物語の間に接点が見つからないと、どんな芝居も浮ついて白々しいものに思えてしまうのだ。

 映画の規模も映像のタッチも、CMか深夜ドラマといった雰囲気濃厚で、これがわざわざ映画である必要性も必然性もまったく感じられない。最終的にDVD発売できちんと帳尻が合うような市場を想定しての作品だろうが、せっかく映画を作るのだから、もっと伸び伸びと表現の羽を広げてもよかったんじゃないだろうか。

4月30日公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給・宣伝:株式会社リクリ、有限会社MU
2005年|1時間22分|日本|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:http://www.licri.co.jp/hairstyle/
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