ビートキッズ

2005/04/07 松竹試写室
周囲と衝突しながら成長していく高校生たちの青春。
主演と演奏は高校生バンドHUNGRY DAYS。by K. Hattori

 俳優業のかたわら若手俳優の養成に力を入れてアクターズクリニックを主催し、映画の企画やプロデュースも手がける塩屋俊にとって2本目の監督作。前作『6週間/プライヴェートモーメント』は若手俳優養成の現場そのものをモチーフにしたような作品だったが、今回は音楽に熱中する高校生たちの姿を描く青春映画になっている。主演は現役高校生バンドHUNGRY DAYSの面々。ブラスバンドの大太鼓からロックバンドのドラムに転向する主人公・横山英二を、HUNGRY DAYSでもドラムを叩いている森口貴大が演じ、彼を音楽の世界へといざなう天才音楽少女・菅野七生を相武紗季が演じている。

 岸和田から大阪の学校に転向してきたエージは、天性のリズム感を買われて強引にブラスバンド部にスカウトされる。そこで部員を引っ張っているのは、音楽については天才的な才能を持つ女子生徒、カンノ君こと菅野七生だった。ナナオの指導もあってバンドはめきめきと実力をつけるが、その様子を見てそれまでブラスを馬鹿にしていた声楽部顧問の細井が横やりを入れる。自分を顧問にしない限り、年に1度のマーチング・コンテストには出場させないというのだ。ナナオが育てたブラスバンドを乗っ取ろうという卑劣な行為。しかしこれには逆らえない。バンドのメンバーたちは一計を案じて、大会当日に細井に一泡ふかせることに成功するのだが……。

 物語は前半がブラスバンド編で、後半がロックバンド編になる2部構成。原作が正編とその続編という形になっているためだろうが、この構成になったことで映画が前半と後半のふたつに割れてしまった。これは前半のブラス編を縮小して後半をメインにするなり、後半のロック編を省いてブラス編だけで完結させるなり、どうにか1本の映画にまとめる工夫をしてほしかった。この映画はまるっきり2両編成の列車で、継ぎ目は中からも外からもはっきりと目についてしまう。ちなみに脚色担当は原田眞人。

 主演の森口貴大は演技初心者だし、相武紗季も演技はまだまだ固い。しかしこの固さが主人公たちの素直になれない気持ちや不器用さとも通じ合い、結果としては初々しくて好感がもてる芝居になっている。演技は下手だ。しかしこれは下手でいい。ライバルバンドのメンバー役で「ウルトラマンコスモス」の杉浦太陽が顔を見せているのだが、むしろそのこなれた芝居が小賢しいものに思えてしまう。

 これは役の設定や映画の狙いともつながっている。ここで描かれているのは、あっちにぶつかり、こっちと衝突し、右往左往しながら自分の生きる道を模索する全力投球の青春像。それは外から見れば、不器用で危なっかしいものだ。エージもナナオも、不器用で危なっかしい自分たちの青春を生きている。大人たちとぶつかろうと、周囲に心配や迷惑をかけようと、あまり後先考えずに身体ごと突っ込んでいく乱暴さこそ青春の特権なのだ。

6月4日公開予定 池袋シネマサンシャイン
配給:松竹 宣伝・問い合わせ:東芝エンタテインメント株式会社
2005年|1時間55分|日本|カラー|シネマスコープ|DTSステレオ
関連ホームページ:http://www.beatkids.com/
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