ナショナル・トレジャー

2005/04/01 シネマ8楽天地(シネマ3)
ニコラス・ケイジ主演の現代版『インディ・ジョーンズ』。
なんか話がユルユルで締まりがないな〜。by K. Hattori

 「アメリカのどこかに莫大な財宝が隠されている」。少年時代に祖父からこの話を聞かされたベン・ゲイツは、大人になってもこの夢を追い続けていた。彼の話に興味を持ったイアンという男をスポンサーにつけて、財宝に結びつく重要な暗号の解読に成功。それによれば、財宝のありかを示す地図はアメリカ独立宣言文書の裏面に記されているという。だが財宝の独り占めを企むイアンは、ここでベンを裏切る。ベンはイアンの手から独立宣言文書と財宝を守るため、自らがイアンに先駆けて文書を盗み出そうとするのだが……。

 ニコラス・ケイジ主演の現代版インディ・ジョーンズだが、主人公ベン・ゲイツのモデルになっているのは、19世紀ドイツの考古学者ハインリッヒ・シュリーマンだろう。シュリーマンは少年時代に父の影響でホメロスを読みあさり、神話の中の存在でしかないと思われていたトロイ文明の存在を確信。事業家として発掘資金をためた後、見事に遺跡を発見したことで知られている。ただしシュリーマンのトロイ文明は過去5千年をさかのぼるスケールの大きなものだが、『ナショナル・トレジャー』のお宝は18世紀に隠されたものだから、時間的なスケールがずいぶんと小さい。一応は古代エジプトやテンプル騎士団を出してみたり、宝探しの導入部を北極にしたりという時空間を広げるための工夫はあるのだが、財宝の規模のわりには話が小さいな〜という印象は最後までぬぐえなかった。日本人である僕が、独立宣言文書にさして有難みを感じないせいかもしれないけどね……。

 物語は財宝の地図を記した独立宣言文書を巡って、複数の勢力が争奪戦を繰り広げるという展開。そこに父と子の葛藤と和解や、危険の中で芽生えるロマンスといった要素をからめていく。ただこうしたドラマの組み立てが、この映画はあまり上手くない。ひとつひとつの場面はそれなりに楽しめるのだが、全体としては焦点のぼけたユルユル状態。なんだかメリハリがないのだ。ひとつの手がかりが次の手がかりへと芋づる式に連鎖していく宝探しに対して、人間ドラマの方も必要に応じて次々に登場人物が増えていく形式になっている。これが何となく、映画全体のだらしなさや締まりのなさにつながっているような気がする。主要な登場人物はもっと早い段階で全員揃えてしまい、あとは独立宣言文書を始めとするお宝争奪戦にすぐ放り込んだ方がよかったかも。特にハーヴェイ・カイテルなんて、出てくるのが遅すぎるよ。

 ダン・ブラウンのベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」から、露骨に影響を受けている部分もある。案外この映画は最初から、「ダ・ヴィンチ・コード」のハリウッド的翻案(正確にはディズニー的翻案かな)としてスタートしたのかもしれない。遠からず本家本元の「ダ・ヴィンチ・コード」も映画になるはず。そうしたら2本の映画を比較してみるのも面白いかも。

(原題:National Treasure)

3月19日公開 日劇3ほか全国東宝洋画系
配給:ブエナビスタ
2004年|2時間11分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.movies.co.jp/nationaltreasure/
Click Here!
ホームページ
ホームページへ