50回目のファースト・キス

2005/3/9 ソニー・ピクチャーズ試写室
ドリュー・バリモアとアダム・サンドラー主演のラブ・コメディ。
最後のオチが鮮やか。後味は爽快だ。by K. Hattori

 アダム・サンドラーとドリュー・バリモアという『ウェディング・シンガー』のコンビが再共演した、コメディ・タッチのラブストーリー。物語の舞台は常夏の島ハワイ。南国での一時のアバンチュールを求める女性客相手に、たぐいまれなるプレイボーイの才能を発揮しているヘンリー・ロスは、たまたま入ったカフェでルーシーという美しい女性に出会って意気投合。ところが翌日カフェで再会した彼女は、ヘンリーのことなどまるで覚えていなかった。彼女は1年前に交通事故に遭って重傷を負い、その後遺症で1日寝ると前日の記憶をすべて失う重度の障害を持っていた。カフェで仲良くなっても、翌日にはまた赤の他人。そんなルーシーとの関係に、ヘンリーは少しずつのめりこんでいくのだが……。

 映画に登場する記憶障害は、『メメント』や『ウィンタースリーパー』『NOVO/ノボ』などにも登場した前向健忘(コルサコフ症候群)という実在の病気。しかし丸1日分の記憶が保持されながら、一晩寝ると前の日のことをすっかり忘れてしまうというのは、映画用に作られた設定だと思う。(それはもはや短期記憶の障害ではないだろう。)しかしこれは病気そのものをテーマにしているわけではないので、こんな病気が実在するのかどうかを問うても意味はない。これは恋人同士の関係が深まっていくことを阻む、新手の「恋の障害」なのだ。障害が多きけれ大きいほど、その恋は熱く燃え上がる。女性に対して浮ついた関係しか持てなかったヘンリーは、ルーシーの気を引き引きとめようと奮闘することで、彼女のことを本気で愛するようになっていく。

 かなり過酷な恋を描いた物語ではあるけれど、全体にユーモアとギャグがちりばめられていて決して暗く深刻なものにはならない。このあたりは古き良きハリウッド映画の伝統を守っている。映画前半でヘンリーがルーシーの気を引こうとあの手この手の奇策を発明するくだりは、観ていてクスクス笑わずにはいられない。親友の中年子持ちサーファーを演じたロブ・シュナイダーがいい味を出している。ワンポイント出演のダン・エイクロイドなどもいい感じだ。一晩寝ると前の日のことをきれいさっぱり忘れてしまうルーシーという役は、下手をすると哀れに見えたり滑稽になってしまうと思うのだが、ドリュー・バリモアがその微妙できわどい綱渡りを最後まで渡りきっている。

 どんなに深く愛し合った恋人同士も、いつかはマンネリ化して倦怠期を迎える。毎日が新しいヘンリーとルーシーの関係は、ある意味で恋の理想像かもしれない。

 監督は『N.Y.式ハッピー・セラピー』のピーター・シーガル。ハッピーエンドは最初から予想できるけれど、このエンディングはおそらくほとんどの観客の予測をいい意味で裏切るものだろう。後味がこれほど爽やかで気持ちがいいラブストーリーは、最近あまりなかったかもしれない。面白かった!

(原題:50 First Dates)

6月公開予定 シネマミラノ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2004年|1時間39分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、SRD
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/
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