ONE PIECE

オマツリ男爵と秘密の島

2005/3/1 東映第1試写室
『デジモン』の細田監督最新作に期待したのだが……。
なんだかいろんな意味で残念な映画。by K. Hattori

 『ONE PIECE』の劇場第1作目が公開されたとき、同時上映されたのは『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム』だった。この『デジモン』を監督した細田守監督が、今度は『ONE PIECE』の最新作を監督することになった。劇場版『ONE PIECE』を楽しみ、細田版の『デジモン』2作品(もう1本は『デジモンアドベンチャー』)に熱狂した僕としては、これは期待せずにいられない組み合わせだ。しかし出来上がった映画は細田テイストを強く感じさせながらも、『ONE PIECE』の楽しさが少しも感じられない失敗作といわざるを得ない。

 このシリーズ自体は一昨年のシリーズ第4作目『デッドエンドの冒険』で「劇場用番外編」としてはひとつの頂点に達してしまい、前作『呪われた聖剣』でゾロと親友サガの友情をからめた、ほとんどスピンオフ企画のような世界に突入していく。今回はその後だから、何らかの新機軸を出したかったのかもしれない。でもこれは暗い。話が暗すぎる。そして絵もいつもの『ONE PIECE』と違うのは気になる。キャラクターの顔もちょっと違うし、中間色を多用した色遣いもこれまでとは大幅に異なる。シリーズ物のアニメで作品によってキャラクターが変化していく極端な例としては『ルパン三世』シリーズがあるが、今回の『ONE PIECE』はそれに近い激変ぶりだ。

 話の暗さは脚本によるものだと思う。今回脚本を担当したのはフジテレビでバラエティ番組の構成作家をしていた伊藤正広。今回の映画に登場するゲストキャラたちは、全員が大切な誰かを喪失した心の傷を持っている。オマツリ男爵も悲しい男だし、チョビヒゲも寂しい。子連れのお父さん海賊も、愛する妻を失っている。そして仲間たちと共に島を訪れたルフィも、大切な仲間たちを次々に失っていくことになる。悲しくて、寂しくて、苦しい話なのだ。

 映画ではこの暗さが物語の開始直後から濃厚で、あちこちにちりばめられているギャグも上滑り気味だ。この物語自体が悪いとは言わないが、だとすれば脚本の構成として、前半は徹底的に明るく楽しい冒険を繰り広げ、終盤にダークな世界に突っ込み、最後はまた明るい場所に戻ってきてほしかった。このあたりはもともとの脚本が悪いのか、それとも監督の演出の問題なのかよくわからない。でも話としても少々わかりにくいところがあるし、これはやっぱり脚本の問題なのかもしれない。

 『デジモン』にはまった細田守ファンとしては残念な映画。これは素材と才能のミスマッチが生み出した結果なのか、それとも細田守という監督にはそれほど表現の引き出しがないのか、『デジモン』はたまたまのまぐれ当たりだったのか……。う〜む。しかし一番困惑するのは『ONE PIECE』のファンだろう。これは誰にとっても、観たことを後悔する作品だと思う。

3月5日公開予定 丸の内東映ほか全国東映系
配給:東映
2005年|1時間31分|日本|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:http://www.toei-anim.co.jp/movie/2005_onepiece/index.html
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