レーシング・ストライプス

2005/2/7 松竹試写室
シマウマが名門競馬場でサラブレッドに挑戦する!
物語は子供向きでも仕事に手抜きはない。by K. Hattori

 競馬場そばの農場で育ったシマウマが自分を競走馬だと思い込み、周囲の協力を得ながらケンタッキー・オープンで優勝する話。要するにシマウマ版の『ベイブ』だが、『ベイブ』で大活躍したアニマトロニクス技術はほとんど使わず、調教した本物の動物を使って多くの場面が撮影されているという。シマウマが鞍をつけて人間を騎乗させるという、それこそサーカスぐらいでしか見られないシーンが見られる。しかもそれがサラブレッドに混じって大レース! 映画の最初から筋立ても結末もわかりきっているが、それでも大いに興奮し、たっぷりと感動させられてしまう。

 よそ者の異分子であろうと、本当の才能があるのなら受け入れますよ……。これが映画のメッセージだ。ただしそこには反対派もいる。異分子を排除しようとする妨害ある。「無駄なことはよせ」という嘲笑がある。「お前は俺たちにはかなわない」という蔑視もある。どんな卑怯な手を使ってでも、仲間以外をレースに参加させまいとするボスがいる。人々の目の届かないところで、フェアとは言えない手段を使って新しい才能の芽をつぶそうとする連中がいる。主人公のシマウマはこうした障害を乗り越えて最後に勝利するが、その勝利を受け入れずに「あんなのズルイ!」と後から文句を言う人もいる。

 日本はアメリカに比べて排他的な社会だと言う。日本に比べればアメリカはずっとオープンで、新しい才能が現れたときに足を引っ張る人はいないと言う人もいる。まあ日本が排他的なことは認めるにせよ、「それに比べてアメリカは」とアメリカを必要以上に持ち上げる必要もない。この映画を観れば、アメリカだって本当は排他的だということがわかる。自分たちの縄張りを守るため、よそ者が入り込まないようにしっかり見張っているのは、日本もアメリカも変わりはしない。そういう意味で、この映画はひどくリアルだ。

 それにしてもアメリカの映画界は動物トレーナーのレベルが本当に高い! レースができるようにシマウマを調教するのもすごいけれど、馬たちが夜な夜な開催している草レースの場面なんて、人間が騎乗していないのに馬だけであれだけの芝居をしている。クライマックスのレースシーンでは、実際には走るのが遅いシマウマに合わせて、サラブレッドをゆっくり走らせているらしい。負けん気の強い競走馬を、あえてゆっくり走るように調教するには3ヶ月以上かかったというから驚き。

 お話は単純ながら見応えがある映画に仕上がっているのは、映画の中に手抜きのないプロの仕事がきちんと生かされているからだと思う。フランキー・ムニッズ、マンディ・ムーア、ダスティン・ホフマン、ウーピー・ゴールドバーグ、マイケル・クラーク・ダンカンなど声のスタッフもお疲れ様。名調教師役のブルース・グリーンウッドもよかったけれど、その娘を演じたヘイデン・パネッティーアの明るさがよかったな。

(原題:Racing Straipes)

3月12日公開予定 丸の内プラゼールほか全国松竹東急系
配給:松竹、ギャガ=ヒューマックス
2005年|1時間42分|アメリカ|カラー|ビスタ|SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.racing-stripes.jp/
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