恋は五・七・五

2005/1/24 映画美学校第2試写室
俳句はオジサンぽくなんてない。俳句はポップなのよ!!
というわけで、俳句をテーマにした青春映画。by K. Hattori

 町中の男の子たちが全員同じ髪型という『バーバー吉野』の荻上直子監督の新作は、毎年夏に松山で開催される「俳句甲子園」をモチーフにした青春映画。統廃合で2年後には学校が消える松尾高校では、最後の最後に校名を歴史に刻もうと、校長の掛け声でありとあらゆる大会に出場して優勝を目指すこととなる。国語教師の高田に割り当てられたのは「俳句甲子園に出場して優勝せよ!」という指示。彼は自分が顧問をしている写真部を急ごしらえの俳句部に模様替えし、帰国子女の一匹狼・高山治子、野球部万年補欠の俳句投稿マニア山岸実、落ちこぼれチアリーダーの内海マコ、ウクレレ好きのPちゃんこと田中弘美、治子に片思いしている写真小僧の土山義仁の5人で大会を目指すのだが……。

 普通の人があまり目を向けないマイナーな競技をモチーフにして、そこで繰り広げられる人間模様を描いていくという切り口は、学生相撲を扱った『シコふんじゃった』や、高校生ロボットコンテストを題材にした『ロボコン』などに通じる。また今回は松山が舞台ということで、女子ボート部の奮闘を描く『がんばっていきまっしょい』と同じ香りもしてくる。いろいろなコンプレックスを抱えた寄せ集めのガラクタチームが、ひとつひとつ障害を乗り越えて最後はチームワークで勝利を掴み取るという筋立ては、どの映画にも共通する定石どおりのストーリーと言えるだろう。

 映画の枠組みやストーリーの流れに奇抜なものがないぶん、「俳句甲子園」という奇抜な競技の面白さが前面に押し出されてくる。登場人物のポジショニングが明確なため、各キャラクターの個性がのびのびと展開できる。ストーリー展開が磐石なので、小さなエピソードに技巧を凝らしても、それがストーリーの流れを損なわないのだ。この映画で言えば、土山が治子の写真を眺めながら部屋でオナニーにふけるシーンや、Pちゃんの素っ頓狂なキャラ、ボケて近所を徘徊する山岸の祖父、やたら弱気な俳句部顧問(演じているのが強面な杉本哲太というのがミソ)などが、映画の中のアクセントになっていたと思う。

 荻上直子監督の演出は前作『バーバー吉野』よりも力強く勢いがあるが、欲を言えばもっとザクザク大降りに仕切ったほうが映画のスピード感が増したように思う。この映画にはまだチマチマと遠慮がちに見えるところがある。押すべきところでさらに強く押し出せば、映画全体にメリハリが付いてより面白くなったのではないだろうか。登場人物たちが校庭で突然キャンディーズの曲を歌うシーンなど、他のシーンにもっと勢いがあればある種の息抜き時間として楽しいものになりそうだけれど、この映画の中ではそこだけがちょっと浮き上がってしまっている。

 ただしこの映画、この日に試写で上映したものをさらに編集して5分ほど縮めると言っていた。それによって映画のスピード感が増せば、ずっといい映画になりそうだ。

春公開予定 渋谷シネ・アミューズほか
配給:シネカノン 宣伝:樂舎
2004年|1時間51分?|日本|カラー|ビスタ|DTS
関連ホームページ:http://www.go-575.com/
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