ネバーランド

2004/12/03 メディアボックス試写室
J.M.バリーが「ピーター・パン」を書いた理由はどこに?
ジョニー・デップ主演の伝記映画。by K. Hattori

 ディズニー・アニメでお馴染み「ピーター・パン」の原作者ジェームズ・マシュー・バリが、いかにして傑作「ピーター・パン」を書いたかに迫る伝記映画。じつはバリは当時、父親を失った4人兄弟と親しくなっていた。その三男坊の名前がピーター。辛い現実を前にして、子供らしい「夢」を失っていたピーターに対して、バリは夢見ることの大切さを語りかける。夢とほんの少しの想像力さえあれば、この世は魔法に満ちているのだ。そんなバリの思いが、やがて「ピーター・パン」という戯曲に結実する。しかしそんな喜びもつかの間、バリの結婚生活は破綻。4人兄弟も父親に続いて母親まで失うことに……。

 バリを演じるのはジョニー・デップ。妻メアリーをラダ・ミッチェルが演じ、4人兄弟の母シルヴィアをケイト・ウィンスレットが演じている。監督は『チョコレート』のマーク・フォースター。原作はアラン・ニーの戯曲「The Man Who Was Peter Pan」で、これを映画用に脚色したのはやはり戯曲家のデイヴィッド・マギー。物語はバリが「ピーター・パン」を書いていた頃の実話をもとにしているが、彼と交流を持つデイヴィズ家の設定を少し変えてあるなど、映画向きの脚色がなされている。これは実話をもとにした映画ではあるが、実話そのものではない。しかし「想像力には現実を変えるパワーがある」というテーマのこの作品に対し、「現実どおりじゃない!」と文句を言うのは野暮もいいところ。こうした変更もまた、作り手の想像力が発揮された結果なのだ。

 バリが子供たちとゴッコ遊びをするシーンが何度も出てくるのだが、裏庭が西部の町になったり、海賊船の甲板になったり、犬がサーカスの熊になったりする様子を、映像として見せていく演出にはゴッコ遊びのリアリティがある。そうなのだ。海賊ゴッコをしている子供たちは、「海賊のふり」をしているのではない。その遊びの中では「本当の海賊」なのだ。「ネバーランド」とは、そんな想像力と虚構の中にある真実を象徴する言葉だ。

 映画の中で感動のポイントはいくつもあると思うのだが、僕は映画の本筋であるバリと子供たち家族の交流よりも、「虚構を通して見えてくる真実」というテーマの方により心を動かされた。虚構は時として現実を揺り動かす。それをよく知っていたバリは「ピーター・パン」の中で、瀕死のティンカーベルを救うためピーターが客席の観客に拍手をするよう呼びかけるシーンを作った。「妖精を信じる人はどうか拍手をしてください!」この場面は映画の中でもとりわけ印象的なシーンとして再現されていて、この場面をきっかけにして画面いっぱいにネバーランドが出現するのだ。

 夢を見ることを忘れた4兄弟の三男、ピーターを演じるフレディ・ハイモアがいい。身体は小さいのに、目だけがすっかり疲れた大人になっているのだ。

(原題:Finding Neverland)

1月15日公開予定 みゆき座ほか全国東宝洋画系
配給:東芝エンタテインメント
2004年|1時間40分|アメリカ、イギリス|カラー|スコープサイズ
関連ホームページ:http://www.neverland-movie.jp/
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