ULTRAMAN

2004/11/19 松竹試写室
初代ウルトラマンの第1話を現代風にリメイクした作品。
宇宙からやってきた怪獣はデーモンだ! by K. Hattori

 円谷プロ製作の劇場版ウルトラマン最新作だが、今回の映画はこれまでの作品と一味も二味も違うハードな内容になっている。1966年にテレビ放映が始まった初代ウルトラマンから38年。これまで多くのウルトラマンが作られてきたが、今回の映画はタイトルもそのままズバリ『ULTRAMAN』だ。シリーズの資産を踏まえた上で、あえてシリーズ中の最新作ではなく、原点に戻って初代ウルトラマンの第1話「ウルトラ作戦第一号」を映画としてリメイクしている。監督はテレビと映画でこれまで何本ものウルトラマンを演出してきた小中和哉。ウルトラマンと合体して怪獣と戦う主人公を、別所哲也が演じる。

 この映画は平成『ゴジラ』シリーズから大映の金子修介版『ガメラ』シリーズに受け継がれ、テレビでは「仮面ライダー」シリーズなども倣っている、きわめてリアリズム志向の強いファンタジー映画になっている。ここで描かれる世界は、誰も疑うことなく怪獣や巨大ヒーローの存在を許すファンタジーの世界ではなく、我々が暮らしている日常の世界に近い設定だ。そこではウルトラ警備隊ではなく、自衛隊が日本の空を守っている。リアルな現実世界で、自衛隊と米軍以外の戦闘機が日本の空を飛ぶはずがない。必然的にこの映画では、地球外からやってきた外敵である怪獣に対処するため、自衛隊と米軍が極秘に協力体制を取っているという設定だ。

 ウルトラマンと怪獣の戦いというクライマックスの約束事は守りつつ、この映画はずっと大人向けの作品に仕上がっている。主人公がもともとウルトラマンの視聴ターゲットとなっている子供ではなく、その父親になっているのも新しい。子持ちのウルトラマンなんて、これまで存在したことがあるだろうか? しかもこの主人公は地球を守る使命に迷わず邁進するわけではなく、仕事と家庭の両立に思い悩んだり、自分に与えられた運命に抗うようにジタバタしてみせる。

 ただしこうしたドラマ部分がうまく行っているかというと、必ずしもそうではない。子供の病気という悲劇的な設定が、そのまま残されて映画が終わってしまうのは不思議。怪獣は倒され、ウルトラマンは去り、主人公には再び平和な日常が戻ってくる。でも1年後に子供は死ぬのか!

 他の生物を取り込んで遺伝子レベルで融合し、どんどんパワーアップしていくという怪獣の設定には既視感が……。これは「デビルマン」に登場するデーモン族と同じなのだ。作り手もちゃんと意識しているようで、クライマックスでは巨大化した怪獣に向かって、人間が「悪魔!」とつぶやくシーンがある。映画版『デビルマン』は悲惨なものだったけれど、今回の『ULTRAMAN』でデーモンが復活したのは複雑な心境だ。ウルトラマン、怪獣、空自の戦闘機が入り乱れる空中バトルを演出したのは、「超時空要塞マクロス」の空中シーンでアニメファンを熱狂させた板野一郎だ!

12月18日公開予定 シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
配給:松竹 宣伝:メディアボックス
2004年|1時間37分|日本|カラー|ヴィスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.ultraman-movie.com/
ホームページ
ホームページへ