バッドサンタ

2004/10/21 東芝エンタテインメント試写室
金庫破りが正業という映画史上最悪のアルバイトサンタ登場。
主人公のダメ男ぶりが徹底していて面白い。by K. Hattori

 ウィリーは中年の飲んだくれオヤジ。毎年クリスマスシーズンにはサンタクロースの衣装でデパートやスーパーの客寄せアルバイトをするが、これは本業のためのカモフラージュだ。ウィリーの正体は凄腕の金庫破り。小人の相棒マーカスと組んでサンタと妖精のコンビとして大型店に入り込み、年末商戦で現金が山積みになった金庫から大金を盗んでは高飛びするというのがふたりの手口だった。大金を手にするたびに堅気になろうと考えるウィリーだったが、そんな決意は酒の前に溶けてしまう。そしてまたクリスマスシーズンが巡ってきて、ウィリーは再びマーカスとのコンビである大型店に潜り込んだのだが……。

 『ゴーストワールド』のテリー・ツワイゴフの新作。主演はビリー・ボブ・ソーントン。エグゼクティブ・プロデューサーとして、コーエン兄弟の名がクレジットされている。アメリカ映画によくある「クリスマスの奇跡」を描いた作品だが、主人公のウィリーが徹底してダメな男になっているのがミソ。とにかく始終酒を飲んでいる。飲みながら手当たり次第に女をくどく。ナンパに成功すればところかまわずセックスする。相手が雇用主だろうと子供だろうと汚い言葉を連発する。酔っぱらってフラフラ歩き、時にぶっ倒れ、小便をたれ流す。堅気の人間としてはまったく役立たずな上に、最近では金庫破りの腕も酒浸りでなまってきた様子。相棒のマーカスに尻を叩かれながら、何とかかんとか体裁を取り繕っているというのが現状なのだ。

 しかしこれはクリスマスの奇跡を描く映画なので、このダメ男が奇跡的に更生することが最初から観客にも予想できる。問題はこのダメダメのアル中男が、いかにして真人間に生まれ変わるかだ。しかしこの映画は、ここでも観客を見事に裏切ってくれる。男の更生のきっかけになるのが、肥満体でいつも鼻を垂らし、近所の悪ガキたちからいじめられてばかりいる、これまた見事にダメな8歳児なのだ。ダメな男がダメな少年に出会って、さらにダメさに拍車がかかっていく。坂道を転がり落ちるように自堕落な生活がエスカレートしていく様子は、観ていてまことに痛快!

 ウィリー役は最初ビル・マーレーにオファーしたそうだが、一度は引き受けたマーレーが行方不明になったことからソーントンにこの役が回ってきたという。クスクス笑いの中に時折爆笑を交え、最後はホロリとさせる絶妙のコメディ。観客の予想を次々に裏切っていくストーリー展開が、最後の最後に落ち着くべきところに落ち着く様子は見事だ。最後は皮肉のスパイスがたっぷりかかった、アクロバティックなハッピーエンド。

 脚本は『キャッツ&ドッグス』『ルーニー・テューンズ/バック・イン・アクション』のジョン・レクアとグレン・フィカーラのコンビ。スーパーの人事係を好演したジョン・リッターはこの映画が遺作で、本作は彼に捧げられている。

(原題:Bad Santa)

クリスマス公開予定 シネマライズ
配給:ワイズポリシー
2003年|1時間31分|アメリカ|カラー|1:1.85アメリカンヴィスタ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.wisepolicy.com/bad_santa/
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