予言

J-HORROR THEATER

2004/10/19 錦糸町シネマ8楽天地(シネマ2)
つのだじろうの「恐怖新聞」を原作としたホラー映画。
悲劇で終わるハッピーエンドがよい。by K. Hattori

 鶴田法男監督の『予言』は、ジャパニーズ・ホラーと呼ばれるブームのキーパーソンである、中田秀夫、黒沢清、清水崇、落合正幸、鶴田法男、高橋洋の6監督が、それぞれ新作ホラー映画を発表する「J-HORROR THEATER(Jホラーシアター)」の第1弾。同時上映は落合正幸監督の『感染』だ。

 原作はつのだじろうの人気マンガ「恐怖新聞」。だが映画は「未来の惨事を伝える新聞」というアイデアをもとに、まったく新たなストーリーを作っているようだ。ただし原作へのリスペクトとして、原作の主人公・鬼形礼をまったく別の形で登場させている。主演は『パラサイト・イヴ』の三上博史と、劇場版『呪怨2』の酒井法子。

 妻子と実家に帰省した帰り道、大学講師の里見は立ち寄った電話ボックスで奇妙な古新聞の切れ端を見つけた。そこには自分の娘がその日の午後8時頃、交通事故で死ぬと書かれていたのだ。時計を見るとまさにその時間。娘が乗る車の方を振り向いた里見の目の前で、次の瞬間、新聞の予告通りに事故は起きて娘は死んでしまう。いったいあの新聞は何だったのか? それから3年。大学を辞め、妻とも離婚し、高校教師になった里見の受け持ちクラスに、例の“新聞”を見たことがあるという女生徒が現れる。未来を予言する新聞は、やはり存在したのだ!

 原作では未来予知のためのツールが常に「恐怖新聞」であり、その記事の背景を解説するキャラクターとしてポルターガイストという憑依霊が登場していた。しかし今回の映画版では、ポルターガイストなし。未来予知も新聞という姿を取ることもあれば、自動書記で紙や壁や黒板に事件の概要を書き付けることもあるという風に姿を変えた。このあたりは「21世紀になって日本人は新聞を読まなくなったんだなぁ……」という変な感慨を持ったりもする。活字の権威が、手書きの記事と同レベルにまで落ちているのだなあ。

 心霊実話(本当に実話かどうかは不明だが)を読者に漫画形式で紹介するという原作とは異なり、今回の映画が描いているのは「人間が未来を知るのは幸福なことか?」という古典的なテーマだ。なまじこれから起きる未来を知っていたがために、主人公の里見は自分の娘や受け持ち生徒の死に責任を感じなければならない。「先生は何もしなかった。それでよかったんです」と生徒に言われた里見は、「俺は何もしなかったんじゃない。何もできなかったんだ!」と歯ぎしりする。やがて彼は自分が知り得た未来から自分自身を解放するために、無謀とも思える戦いの中に飛び込んでいく。

 映画のラストは悲劇で終わる。しかし里見の心が解放されたという意味で、これは間違いなくハッピーエンドなのだ。いい映画じゃん! ただし三上博史と酒井法子の芝居の質がまるで異なるので、このふたりの場面にはギクシャクした印象が残る。それはそれでファンタジーとしてはOKだけどね。

10月2日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
2004年|1時間35分|日本|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:http://www.j-horror.com/
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