ブラザーフッド

2004/09/30 新文芸坐
兄弟や恋人たちの絆が朝鮮戦争に引き裂かれていく。
やりたいことはわかるが長すぎる。by K. Hattori

 大ヒット作『シュリ』の後、しばらくプロデュース業に専念していたカン・ジェギュ監督の新作は、朝鮮戦争に巻き込まれた家族の悲劇を描いた戦争スペクタクル人間ドラマ。2時間半近い上映時間、1950年代の朝鮮を再現した美術と衣装や軍装品などの小道具類、チャン・ドンゴンとウォンビンという人気スターの出演、ソウルを起点に朝鮮半島全体を舞台とする空間的なスケールの大きさなど、どれをとっても大作の名に恥じない作品だ。戦争を生き延び今は老人となった主人公が、ある出来事をきっかけにして過去を回想するという構成や戦争シーンのリアリズムなどは『プライベート・ライアン』を強く意識しているように見える。

 ただしこの映画、対象をある程度突き放している『プライベート・ライアン』に比べるとかなりウェットな仕上がり。このあたりは韓国人の民族性や感性であり、同時にカン・ジェギュ監督の個性でもあるのだろう。『シュリ』はそのウェットな部分がプラスになっていたと思うのだが、今回の映画はいささかベタベタしすぎているように思えた。個々のシーンはリアリティがあっても、ストーリー全体を見渡すと偶然や幸運に頼った波瀾万丈の物語になりすぎているようにも思う。「たまたま」「偶然」「ちょうどその時」「運よく」「折よく」という形容詞でしか語れない筋運びに便りすぎなのではないだろうか。もっともこれは、何から何まで観客の目の前に直接具体的な描写として見せずにいられないという、娯楽映画作家としてのサービス精神が過剰なのかもしれないが。

 貧しいながらも平和に暮らしていた一家の長男と次男が、朝鮮戦争の勃発によってふたりとも戦場に送られる。一家の期待を背負って立つ次男を何とか除隊させようと、長男はあえて危険な任務に志願する。戦果が認められて勲章が得られれば、その褒賞として弟を除隊させることができると聞いたからだ。だがそんな兄の気持ちに感謝しつつも、弟は次第に兄を恨むようになる。軍隊内で出世していくにつれ、兄からはかつての優しさや思いやりが失われていく。まるで血の通わない殺戮マシンのようになる兄の姿を、弟は見るに忍びない。やがて兄弟の関係に、決定的な亀裂が走る出来事が……。

 この映画の欠点は第一に長すぎることだ。これに比べれば、演出がセンチメンタルで甘ったるいことなど些細なこと。そんなものは演出家の癖や趣味嗜好の問題に過ぎない。丸々3年以上に渡る戦争の全体像を、ひとつの家族の姿を通して描くという狙いはわかる。しかしそのために屈折した兄弟愛という単一の切り口だけで押し通すのは、物語の構成上どうしても無理があるのではないだろうか。この映画は兄弟がソウルに帰還したところで実質的に終わっている。せっかく弟の除隊が決まったのに……というところで物語にケリをつけて、あとは別の処理をした方が映画全体がすっきりまとまったと思う。

(英題:Brotherhood)

6月26日公開 日比谷スカラ座1他・全国東宝洋画系
配給:UIP
2004年|2時間28分|韓国|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://www.brotherhood-movie.jp/
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