リディック

2004/07/12 松竹試写室
逃亡犯リディックとネクロモンガー軍団の戦い。
SFスリラー映画『ピッチブラック』の続編。by K. Hattori

 ヴィン・ディーゼル主演のSFアクション映画『ピッチブラック』の続編。物語は『ピッチブラック』の数年後という設定で連続性があるのだが、宣伝資料ではあまり『ピッチブラック』の名前が出てこない。これは前作と今度の作品とで配給会社が違うせいかとおもいきや、じつは原題からも『Pitch Black』のタイトルは消えている。前作は低予算の『エイリアン』亜流映画だったが、今回はそれと打って変わった超大作。新しい観客を獲得するために、一度前作とのつながりを切りたかったのかもしれない。

 逃亡中のリディックは追ってきた賞金稼ぎから、自分の身柄に超高額の懸賞金がかけられていることを知る。賞金を懸けたのはエレメンタル族の生き残りエアリオン。彼女はかつてひとつの予言をした。それは現在宇宙を恐怖支配しようとしているネクロモンガー軍団の王ロード・マーシャルを、フューリア族の人間が倒すというものだった。予言を恐れたロード・マーシャルは、フューリア族を皆殺しにする。だがリディックはその数少ない生き残りなのだ。ロード・マーシャルはリディックを殺そうとするが、彼は別の賞金稼ぎに捕まってしまう。リディックは惑星クリマトリアの刑務所に送られるが、そこは夜はマイナス300度、昼は700度の高温に包まれる地獄だった。

 今回の映画は前作『ピッチブラック』と正反対のことをするのが狙いらしい。前作は数少ない登場人物たちが、真っ暗闇の惑星でモンスターと戦いながら朝が来るのを待つという物語。だが今回は登場人物が膨大な数にふくれ上がり、物語の舞台も複数の惑星にまたがっている。リディックは特殊な手術で暗視能力を身につけているのだが、今回はその能力に活躍の場はない。利己的な一匹狼の逃亡者だった彼は、今回宇宙の平和のためにネクロモンガーの大軍団と闘う羽目になる。

 作品の規模を大きくして物語の方向性を変えたことで、『ピッチブラック』にあったシンプルなサスペンスは姿を消した。しかし世界観が広がったことで、前作では不可能だった多種多様なアクションを映画に盛り込むことも可能になった。演じているヴィン・ディーゼルに貫禄が増したせいもあり、リディックというキャラクターにも奥行きが増している。もっとも前作のミステリアスな魅力は失われる。このあたりは一長一短かも。

 映画の前半はあまりにも話がめまぐるしすぎてウトウトしてしまった。後半は刑務所からの脱出シーンに前作同様の面白さがあるが、ネクロモンガー勢力の内部で起きている裏切りや陰謀などは少々陳腐な印象も残る。ロード・マーシャルを裏切ろうとするヴァーコ司令官と妻のエピソードなんて、まるで「マクベス」そのまんま。ラストの決闘シーンは面白いけれど、状況としてはリアリティに欠ける。これはなんだ。「ハムレット」か? 話がどうも古くさい。古典は永遠ということかもしれないけど……。

(原題:The Chronicles of Riddick)

8月7日公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:東芝エンタテインメント、松竹
2004年|1時間58分|アメリカ|カラー|シネスコ|DTS、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.riddick.jp/
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