マーダー・ライド・ショー

2004/07/01 松竹試写室
殺人一家の家に迷い込んだ若者たちが次々に殺される。
『悪魔のいけにえ』のロブ・ゾンビ流リメイク。by K. Hattori

 ひどく不愉快な映画だ。観ていてこれほど不快な思いをした映画には、ここ数年お目にかかったことがない。もちろんヘタクソな映画というのは山ほどあるし、つまらない映画や退屈な映画もたくさんある。でもこの映画はそうした出来損ないの映画とはまったく違うのだ。この映画は、観客に不愉快な思いをさせることを目的に作られている。観客がスクリーンから思わず目を背け、吐き気をもよおし、ゲンナリすれば、それはこの映画の製作者にとって万々歳なのだ。ホラー映画の“HORROR”という言葉が示しているのは、単なる「恐怖」ではない。生理的な嫌悪感が伴ってこそ、それは初めてホラーになる。この映画はその点で、まさに正統派のホラー映画と言えるだろう。

 1977年のハロウィン前夜。2組の若いカップルを乗せた車が、給油のため「キャプテン・スポールディングのバケモノ博物館」に立ち寄る。その博物館の名物は、全米の有名な大量殺人鬼の犯罪をマネキンで再現した「マーダー・ライド・ショー」という出し物。そこに登場するドクター・サタンの処刑場がすぐ近くにあると聞いて、4人の若者たちは好奇心からその場に向かう。だが途中でセクシーな女性ヒッチハイカーを同乗させてしばらく行くと、車は突然パンク。助けを求めようとヒッチハイカーの家に入り込んだ4人は、そこで身の毛もよだつ恐怖を体験することになる。

 監督・脚本・音楽を担当するのは、ミュージシャンのロブ・ゾンビ。これまでも数々の映画に楽曲を提供してきた彼の、長編映画監督デビュー作だ。若者たちが入り込んだ家に超エキセントリックな殺人一家が住んでいて、若者たちが次々に血祭りに上げられていく……というストーリーの骨格は、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』(74年)を下敷きにしている。『悪魔のいけにえ』はその後何度か続編を作ったりリメイクをしたりしているのだが、たぶん最もオリジナルの精神を継承しているのがこの『マーダー・ライド・ショー』ではないだろうか。

 変態殺人一家の話だと思っていると、それがどこかで一線を越え、わけがわからないまま超自然のパワーをまき散らし始めるあたりが素晴らしい。『悪魔のいけにえ』ではミイラになった爺さんが若い女の指をチューチュー吸う場面で、空間がグニャリと歪むような衝撃を味わうのだが、この『マーダー・ライド・ショー』の終盤はまさに空間が歪みっぱなしなのだ。墓地から続くへんてこな地下道はいったい何なんだ? このあたりはもう、理屈ではなくて感覚だけの世界。そう、理屈を越えた恐怖こそが、ホラーの神髄なのだ。

 この映画はディテールの作り込みがひどく凝っていて、監督のビジュアルセンスを感じさせる。続編も製作中とのことだが、この1作目が日本でそれなりにヒットしないと2本目は観られない。ひどく不快になる映画ですが、みなさん観てください!

(原題:House of 1000 Corpses)

8月14日公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:アートポート
2002年|1時間29分|アメリカ|カラー|ヴィスタ|SDDS、DTS、SRD、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.emovie.ne.jp/murderride/preindex.html
ホームページ
ホームページへ