マリアージュ!

2004/06/18 パシフィコ横浜
結婚式当日に結婚の真実を突きつけられたカップルは……。
離婚で終わる超辛口の結婚コメディ。by K. Hattori

 結婚式のドタバタを描くコメディ映画は多く、数え上げたらおそらく相当な数になることだろう。どんな映画も展開は大同小異。結婚するカップルが式直前か当日になってケンカを始め、最後は雨降って地固まるで仲直りのハッピーエンド。この映画もそんな定型をなぞっている。少なくとも式の主役である新郎新婦に関しては……。だがそこはフランス映画。一筋縄ではいかない仕掛けがあちこちに隠してある。世の中の結婚がすべてハッピーエンドだとは限らない。フランスでは結婚したカップルの3分の1は離婚するという話だ。この映画では、そんな現実にもきっちりと目を配っている。

 「結婚は籠城した城と同じ。外の者は入りたがり、中の者は外に出たがる」という中国の格言から映画は始まる。この映画を一言で紹介すれば、まさにこの通り。若い恋人同士が結婚に飛び込む傍らで、それまで夫婦だった者たちが別れていくという話だ。結婚するのはジョアンナとバンジャマン。その立会人になったのはヴァランティーヌとアレックスの夫婦。だがこの夫婦の関係は、今まさに壊れようとしている。ヴァランティーヌは既婚男性と不倫中だったが、それがアレックスの知るところとなったのだ。一方これからいよいよ結婚という寸前になって、新郎のバンジャマンは顔面蒼白になっている。彼は前夜のどんちゃん騒ぎで、どこの誰と何をしたのかさっぱり覚えていなかったのだ……。

 映画に登場するのは、これから結婚する者、離婚寸前の者、離婚経験者、離婚した後に再婚した者、これから再婚を考えている者などだ。ここには結婚の現在・過去・未来がすべて揃っている。だが結婚した人たちの中には、独身男女が思い描く「理想の結婚」をしている人たちなど誰もいない。結婚式を描くコメディ映画で、ここまで結婚に対して悲観的な態度を示す映画は珍しいのではないだろうか。

 映画の中で印象的だったのは、離婚したあと再婚した男が自分の体験談を語る場面だった。離婚した人間を、世間は再婚させたがるというお話。こういう話って、確かにありそうではある。都会では離婚なんてぜんぜん珍しくないんだけど、田舎だと異端視されるのかもしれない。(ちなみにフランスの離婚率は結婚カップルの3分の1だが、パリではさらに多くてカップルの2組に1組は離婚するそうだ。)

 ハリウッドの結婚コメディは、結婚を一種の通過儀礼として描く。未熟な若者が結婚というイニシエーションを経て、成熟した大人の仲間入りをするわけだ。でもそんなのは嘘っぱちなのだ。結婚しても人間は成熟などしない。この映画に登場する既婚者たちの、なんと愚かで子供っぽいことか。結局最後にもっとも懸命な決断をしたのは、最も若い新婚夫婦だったのかもしれない。

 パーティに突然現れたオカマのエピソードは爆笑必至。考えてみれば、映画の中で結婚と無関係なのは彼(彼女)だけです。

(原題:Mariages!)

6月18日上映 パシフィコ横浜
第12回フランス映画祭横浜2004
配給:未定
2004年|1時間41分|フランス|カラー|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/
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