永遠の片想い

2004/05/24 メディアボックス試写室
『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンの主演最新作。
最後は思い切り泣かされた。by K. Hattori

 喫茶店でバイトをしていたジファンは、店を訪れたスインという女の子に一目惚れ。店を出た彼女たちを追いかけて交際を申し込むが、スインには「こんなの迷惑なんです」とあっさりと断られてしまう。それでもジファンはめげない。「恋人がだめでも、今度会った時は友だちとして付き合ってほしい」と宣言。これは一緒にいたスインの親友ギョンヒにも大受けだった。それから数日後、スインとギョンヒはジファンの喫茶店を再び訪れ、3人は約束通り友人として付き合うようになった。遊園地に行ったり、映画に行ったり、時には海に旅行に行ったりする3人組。やがてジファンの気持ちは、少しずつスインからギョンヒの側に移っていく。彼女の方も、ジファンを憎からず思っている様子だったのだが……。

 『猟奇的な彼女』で豪傑美女に翻弄される男を演じたチャ・テヒョンの新作。相手役は『ラブストーリー』のソン・イェジンと、『ブラザーフット』に出演しているイ・ウンジュ。監督・脚本のイ・ハンはこれが長編映画デビュー作だという。主人公ジファンに突然送りつけられてきた写真から、物語は5年前の回想へ。スインとギョンヒが突然彼の前から姿を消してしまった理由を探す謎解きの旅と、過去の美しい日々の記憶が巧みに組み合わされている。

 回想シーンに登場する映画『イル・ポスティーノ』が、ドラマのテーマと重なりあう小道具として機能している。映画の中の同じ台詞を3人がそれぞれつぶやいてみせるシーンでクスクス笑わせるのだが、後からこのシーンを思い出すと胸がぎゅっと締め付けられそうになる。『イル・ポスティーノ』の主演俳優マッシモ・トロイージは、映画撮影終了直後に急死している。映画そのものも、主人公の死で終わる話だった。『永遠の片想い』が『イル・ポスティーノ』を引用しているのは、気の利いた台詞を主人公たちに引用させるためではない。胸をときめかせる「恋」の向こう側にある「永遠の別れ」を、観客にそれとなく提示する伏線になっているのだ。『イル・ポスティーノ』を観ているか観ていないかで、この映画の引用の受け止め方はずいぶん違ってくるだろう。

 年齢を重ねてそれなりの恋愛経験を経ていると、この映画に登場するような「友だち以上で恋人未満」という関係は面倒くさいばかりに思える。でもこの映画はその中途半端な関係だけが持つ楽しさを生き生きと描いて、僕にもこんな恋をしていた時があったことを思い出させてくれる。青春時代の男女だけが持つある種の潔癖さが、この悲恋物語の核になっているのは確かだろう。30過ぎてこんな男女がいたら「バカじゃないの?」と言うことになるけどね。

 映画を観て久しぶりに泣いた。でもこの涙の中は、通り過ぎて永遠に取り戻すことのできない、自分の青春時代に対する郷愁が幾分か混じっている。まぁ青春時代をもう一度やり直したいとも思わないんだけど。

(英題:Lovers Concerto)

7月公開予定 シネ・リーブル池袋
配給:タキコーポレーション、リベロ
2003年|1時間45分|韓国|カラー|ビスタサイズ|ドルビー
関連ホームページ:http://www.eien-kataomoi.com/
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