ホワイト・バレンタイン

2004/05/24 メディアボックス試写室
『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンのデビュー作。
甘ったるい昔の少女マンガのような話。by K. Hattori

 『猟奇的な彼女』が日本でもヒットし、新作『4人の食卓』も間もなく公開される韓国の人気女優チョン・ジヒョン。『ホワイト・バレンタイン』は彼女が1999年に出演した映画デビュー作。この映画の撮影時、彼女はまだ17歳だったという。

 小学生の頃、年齢を偽って若い軍人と文通していたジョンミンは、彼から「会いたい」という便りを受け取った時、待ち合わせの駅には行かなかった。結局彼との文通は、それきり途絶えてしまった。それから年月がたち、二十歳になったジョンミンは祖父の書店を手伝っていたが、ある日彼女の部屋に1羽のハトが迷い込んでくる。そのハトの脚に付いていた通信管には、遠い恋人に当てた切ないラブレター。ヒョンジョンはその手紙に気まぐれで返事を書き、そこから伝書鳩を使った手紙のやりとりが続くのだった。じつはその手紙の相手こそ、ジョンミンがかつて文通していたパク・ヒョンジュンだった……。

 大昔の少女マンガみたいな話だなぁ、というのがこの映画の印象。映画の開始直後、ヒョンジュンが町に小鳥屋の店を構えた時点で、彼がジョンミンのかつての文通相手であることが見え見え。あとは互いが手紙の主だと知らないまま、ふたりのすれ違いが続くのだ。万分の一の偶然と、強引すぎるすれ違いメロドラマ。画面全体にぐるりと光がまわった平面的なライティングも、この映画の絵空事感を高めていると思う。

 もっともこの映画、話そのもは他愛のないマンガでも、登場人物たちが魅力的な人間として描かれている。このため物語が絵空事でも、映画そのものは白々しい嘘っぱちという感じはしないのだ。話がウソでも映画はウソにならない。これが映画の面白いところだ。主人公のジョンミンとヒョンジュン、書店を営むジョンミンの祖父、ヒョンジュンの先輩、ジョンミンに思いを寄せる大学生、映画の最初と最後に登場する郵便屋など、どの人物も自分の与えられた役割の中で、それぞれのバックグラウンドを持つ生きた人間となっている。台詞のやりとりや芝居の段取りなどが調子よすぎる面もあるが、ポンポンと歯切れよく交わされる会話は舞台劇の台詞回しのようにリズミカルでテンポがいい。このテンポが、この映画のリズムを作り出している。

 そもそも予定調和な雰囲気で始まった物語は、最後まで予定調和で終わる。これはこれで気持ちいいのだが、あまりにも観客の好意や善意に頼りすぎた語り口だと思った。特に映画の終盤、ジョンミンは小鳥屋を辞めて何をやっているのだろうか。カメラマンになっちゃんたんですか? それとも単なる傷心の旅を続けているの? 本を出したって、それはどんな本なんですか? 映画のラストシーンも、これで主人公たちが再会して結ばれたと暗示するのはちと苦しい。ベンチに置きっぱなしの絵本にはどんな意味が? こういう部分にきちんとケジメがないと、映画の最後が甘くなる。

(英題:White Valentine)

6月19日公開予定 シネマミラノ(レイト)
配給:ハピネット・ピクチャーズ、ツイン
1999年|1時間29分|韓国|カラー|アメリカンビスタ|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.twin2.co.jp/wv/
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