アメリカの有名なバレエ団、ジョフリー・バレエ・オブ・シカゴを舞台にした、ロバート・アルトマン監督の群像劇。ダンサー役で『スクリーム』のネーヴ・キャンベルが出演しているのだが、彼女が映画全体を引っ張る主役というわけではなく、多くのエピソードの中で比較的多くの時間を割かれているという程度にとどまっている。なおキャンベルはこの映画の原案・製作も兼ねており、劇中のダンスシーンも吹き替えなしに踊っているそうだ。彼女は9歳から15歳まで、本格的にバレエのレッスンを受けていたという。意外なところで、意外な人の意外な経歴が役に立っている映画なのだ。
物語というのは特にないのだが、ヒロインのライを中心に観ていくならば、これは彼女が無名のダンサーから舞台中央でスポットライトを浴びるバレエ団の花形へと成長していく物語だ。案外こうしたサクセスストーリーが、ネーヴ・キャンベルが最初に持っていたアイデアなのかもしれない。しかし完成した映画は、この成功ドラマをかなり小さく扱っている。映画の主役はバレエ団そのもの。ドラマを作っているのは、そこに参加している大勢のダンサーやスタッフたちなのだ。
大勢の登場人物が小さなエピソードを持ち寄り、点描画法のように大きな映画を作っていくスタイルは、ファッションショーをモチーフにした『プレタポルテ』に近いかもしれない。しかし豪華キャストの『プレタポルテ』に対して、今回の映画はごくわずかな出演者を除いて、出演者たちは映画ファンにまるで馴染みのない本物のダンサーたちだ。この無名性が、映画にドキュメンタリー風の臨場感を与えている。この映画はどこからどう見ても作り事だ。でも同時に、どこからどう見ても本物にしか見えない。映画の印象としてこの作品に最も近いのは、クリストファー・ゲスト監督が作った『ドッグ・ショー』や『みんなのうた』などの疑似ドキュメンタリーかもしれない。
脚本は『ジョージア』や『ポロック/2人だけのアトリエ』のバーバラ・ターナー。彼女はネーヴ・キャンベルと一緒にジョフリー・バレエを2年間も取材し、バレエ団やダンサーたちの生々しい生態と声を脚本に反映していったという。この映画から伝わってくるバレエ団の厳しさは、残酷さや冷酷さと紙一重だ。振付師が少しでもダンサーの動きを気に入らないと、練習が大詰めになっていてもあっという間に出演者交代。練習中に大ケガをするダンサーがいても、練習は何事もなかったかのようにすぐ再開される。本番中にダンサーがケガをすれば、衣装を引っぺがして控えのダンサーに着せ、そのまま舞台は続く。これを厳しいと思う僕が、甘っちょろいのだろうか……。
映画の印象は限りなくドキュメンタリーに近いが、出演者の交代、屋外公演での大嵐、ダンサーのケガなど、印象的な事件が次々に都合よくカメラの前で起きるというのはフィクションならではだ。
(原題:The Company)
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