ステップ・イントゥ・リキッド

2004/04/28 アウラ・スクリーニング・ルーム
サーフィン映画の古典『エンドレス・サマー』のスタッフが再結集。
迫力の水中映像にワクワクする。by K. Hattori

 サーフィン映画の古典『エンドレス・サマー』のブルース・ブラウン監督がエグゼクティブ・プロデューサーを担当し、息子のデイナ・ブラウンが監督したサーフィン・ドキュメンタリー。ハワイ、マウイ、カリフォルニア、オーストラリアなど、有名なサーフィンスポットを次々に巡りながら、年齢も性別も国境も時間も越えて広がるサーフィンの世界を案内してくれる。僕はサーフィンと無縁の生活をしているが、そんな僕が観ても楽しめる映画だ。

 この映画はプロとアマチュア、子供と老人、ビルほどもある巨大な波と膝丈ほどの小さな波、世界的に有名なサーフィンの名物スポットと地元民しか知らないローカルなサーフスポットなどを対比させながら、サーフィンというスポーツの間口の広さや奥行きを表現しようとしている。目もくらむ大波に挑む命がけのサーフィンや、最新式のフォイルボードで空中を飛ぶように滑るサーフィンなど、最先端のサーフィンを紹介したかと思えば、サーフィンが初めてという子供たちが夢中になって波に乗る姿や、サーフィンが人生の一部になってしまったような男たちのサーフィン漬けの生活ぶり、かつて『エンドレス・サマー』などにも出演した伝説のサーファーの現在などを見せてくれるのだ。この映画の中には、サーフィンの現在と過去と未来が詰まっている。

 プロもアマチュアも含めた有名無名のサーファーたちが、サーフィンの魅力について語る場面もサーフィン好きにはたまらないのだろう。だがこの映画で最大の見どころは、華麗でダイナミックな水中撮影にあると思う。小型の水中カメラを抱えたカメラマンが、水中からサーファーの姿を捕らえるのだ。サーファーはカメラの目と鼻の先を通過していく。時にその距離はまったくのゼロになる。サーファーがカメラマンをからかうように、軽くタッチしていく場面があるのだ。サーファーに衝突することなくギリギリで身をかわすカメラマンもすごいが、カメラに向かってまっしぐらにボードを滑走させていくサーファーもすごい。この映画の映像はサーファーとカメラマンの共同作業と言えそうだ。

 僕は映画『ブルークラッシュ』やアイマックス映画『エクストリーム』のサーフィン映像にワクワクするのだけれど、この『ステップ・イントゥ・リキッド』はそんな「サーフィン映像好き」にはたまらない映画になっていると思う。おそらくこういう映画はビデオやDVDで観る人の方が多いと思うのだが、大きなスクリーンで観た方が迫力があることは間違いない。映画のオープニングに「特撮なし」「スタントなし」と出るのには笑ってしまうが、生身の人間が大自然に挑む迫力満点の映像には説得力がある。

 サーフィンは趣味や余暇の過ごし方ではなく人生そのもの。一度サーフィンの魅力にはまれば止めることはできない。そんな言葉に、サーフィン未経験の僕でさえウンウンと頷いてしまった。

(原題:Step Into Liquid)

夏公開予定 シネマライズ
配給:グラッシィ
2003年|1時間27分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.glassymovie.jp/
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