ザ・ボディガード

2004/04/28 映画美学校第1試写室
スタローン主演のアクション・コメディ映画なんだけど……。
ほとんど笑えない。それが致命的だ。by K. Hattori

 マフィアの大ボス、アンジェロ・アリギエーリが殺された。彼には素性を隠して養女に出した一人娘ジェニファーがいる。アンジェロのボディガードだったフランキー・デラーノは、ボスの遺言を守ってジェニファーを守ろうとするのだが、そこにも殺し屋の手が伸びてくる……。シルベスター・スタローン主演作で、共演はマデリーン・ストウ。大ボスのアンジェロ役で、2001年に死去したアンソニー・クインが出演している。これが遺作。

 配役は豪華だが、映画としてはまるで物足りない。アンソニー・クインはともかくとして、これはスタローンやマデリーン・ストウが出演するような映画ではないだろう。このふたりに、コメディはまるで向いていないのだ。この脚本で映画を撮るなら主演のふたりはもっと別のキャスティングがあっただろうし、このふたりを主演にするなら、脚本にはもっと大幅に手を加えなければならないと思う。

 物語は凄腕の中年ボディガードが保護対象の女性と恋に落ちるというものだが、現在のスタローンに『ボディガード』のケヴィン・コスナーのようなオーラはないし、ヒロインを演じたマデリーン・ストウにもホイットニー・ヒューストンのような若さと輝きは望めない。(これは『ボディガード』当時のホイットニー・ヒューストンという意味。今はもうダメだよな。)感情の起伏が激しいイタリア女の滑稽さを出すにしては、マデリーン・ストウはやせっぽちすぎる。これじゃ精神状態が不安定なヒステリー女だ。

 マフィア映画のパロディなのだから、脚本はもっと工夫があっていい。例えば主人公ふたりの性格を極端にする。フランキーは寡黙でほとんど何もしゃべらない。殴られたり撃たれたりしても、うめき声も出さないほど。会話には頷いたり首を横に振って意思表示する。逆にジェニファーはおしゃべりが止まらない。普段からしゃべっているが、緊張するとますます口数が多くなる。こうした凸凹コンビこそ、コメディの基本だろうに。

 コメディ映画としてはまるで笑えないのだが、案外この映画は最初シリアスなものとして企画され、それがコメディに化けたのかもしれない。そう考えると終盤のヘンテコなドンデン返しなども、何となくこうなった理由がわからぬでもない。

 スタローンは『ドリヴン』で第一歩を踏み出した脇役としての道を、いっそのこと真剣に模索してはどうなのか。公開順が逆になってしまったが、『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』もそうした脇役の道ということで、僕はスタローンを評価しているのだけれどね。いずれにせよ、今回の映画は「死んでしまった往年の名優(クイン)」「年を取って身体の動かなくなった元アクションスター(スタローン)」「寄る年波に勝てないお肌が悲しい美人女優(ストウ)」が顔を揃えた、ひどく悲しい映画に思えてならない。スタローンもストウも、あと一花咲かせようぜ!

(原題:Avenging Angelo)

6月中旬公開予定 シネマミラノ
配給:アートポート
2002年|1時間38分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|SDDS、DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.the-bodyguard.jp/
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