LIVE FOREVER

リヴ・フォーエヴァー

2004/04/21 東芝エンタテインメント試写室
90年代のイギリスで大流行したブリットロックの内幕に迫る。
結構笑えるところもあったりして……。by K. Hattori

 1990年代半ばにイギリスの音楽業界を席巻し、世界にも発信された“ブリットポップ”についてのドキュメンタリー映画。単にその時代の音楽やミュージシャンを紹介するにとどまらず、その時イギリスで何が起きていたのかを、政治やアートやファッションや映画といった分野からもバサバサと斬り込んでいく。オアシスのノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガー、ブラーのデーモン・アルバーン、パルプのジャーヴィス・コッカーなど、当時のブリットポップを代表する面々が、当時を振り返りつつインタビューに答えているのも面白い。当時の出来事は彼らにとって、もはや遠い昔の出来事になっているようなのだ。これはインタビューを受けている他のジャーナリストや評論家、アーティストやデザイナーなども同じ。皆がはるか昔を懐かしむように目を細めながら、90年代の英国ロック事情を語っている。こんなものを観ると、90年代をつい昨日のことのように思っている僕などは、急にお年寄りになったような気がしてしまうなぁ。

 僕自身はあまり音楽を聴かないし、この映画に描かれている90年代のイギリス・ロック事情にもまるで不案内だ。だから音楽ファンがこの映画を楽しむようには、この映画をそのまま楽しむことができない。でも考えてみれば、90年代というのは映画界にとっても次々に新しい才能が出てきていた。タランティーノの『レザボア・ドッグス』が91年。北野武の『ソナチネ』が93年。ピーター・ジャクソンが『乙女の祈り』は94年の映画で、デヴィッド・フィンチャーの『セブン』が95年製作。本作でも紹介されているダニー・ボイルの『トレインスポッティング』や、ウォシャウスキー兄弟の『バウンド』は96年に発表され、ポール・トーマス・アンダーソンの『ブギーナイツ』が97年。そして『シックス・センス』が99年。あ〜、こうして映画タイトルや名前を並べてみると、僕も目を細めて遠い目をしてしまうかもしれない。

 映画から伝わってくるのは、その時代の政治も経済も文化などが互いに影響を与え合ってひとつながりになっているという事実だ。ブリットポップの隆盛がトニー・ブレア政権を生み出したとまでは言わないが、ブリッドポップもトニー・ブレアも同じように若い世代の共感と支持を集める存在だった。いわばふたつは、同じ母から生まれた二卵性双生児みたいなものなのだ。だがトニー・ブレアの政権は長期化し、ブリットポップの流行は一過性のもので終わってしまった。保守党政権に対する対抗勢力として登場したブレアが政権奪取で勢いづくのに対し、保守党政権下の社会で不平不満をくすぶらせていた若者の音楽として登場したブリットポップは、ガス抜きされて力を失ってしまう。この映画の中では、ブレアのパーティに呼ばれてにやけた顔をさらすノエル・ギャラガーの顔から、ブリットポップの凋落が始まる。すべてはひとつにつながっているのだ……。

(原題:Live Forever)

夏公開予定 シネマライズ渋谷
配給:ワイズポリシー
2002年|1時間22分|イギリス|カラー|スタンダード|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.cinemaparisien.com/
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