ル・ディヴォース

〜パリに恋して〜

2004/04/06 FOX試写室
エピソードの交通整理がうまくできていないと思う。
ケイト・ハドソンの役も似合わないよ。by K. Hattori

 出産を控えた姉ロクサーヌを訪ねてパリにやてきたイザベルは、義兄のシャルル・アンリが姉と子供を捨てて別の女のもとに走ったことを知る。姉は離婚を拒んでいるが、シャルル・アンリは新しい恋人とベタベタして、二度と姉とよりを戻す気配はない。彼の母は息子の浮気にため息をつきつつ「男の浮気は多少多めに見なくちゃ」などと大人の対応を店ながら、さっさと財産分与で自分たちの有利になるように動き始める。財産分与で最大の争点になるのは、ロクサーヌがアメリカの両親から結婚祝いに送られた1枚の絵だ。実家の納屋に放り出してあった絵だが、これがラトゥールの真筆だとすれば美術史に残る大発見。当然かなりの高額になるはずだ。シャルル・アンリと家族は、この絵を夫婦の教諭財産だと主張する。一方でイザベルはシャルル・アンリの叔父エドガルと親しくなり、あろうことか彼の愛人になってしまった……。

 ジェームズ・アイヴォリー監督の新作は、パリを舞台にフランス人家族とアメリカ人家族が火花を散らす集団コメディ。出演者の顔ぶれは豪華。主人公のイザベルにケイト・ハドソン、姉ロクサーヌにナオミ・ワッツ、ふたりの両親はストッカード・チャニングとサム・ウォーターストン、友人のアメリカ人作家にグレン・クローズ、離婚問題専門の弁護士にジャン=マルク・バール、イザベルのボーイフレンドにロマン・デュリス、浮気夫シャルル・アンリにメルヴィル・プポー、その母スザンヌにレスリー・キャロン、叔父エドガルにティエリー・レルミット、浮気相手の夫にマシュー・モディン、他にもスティーブン・フライやペペ・ニューワースなどなど……。

 複雑な家族間の駆け引きにお金やセックスの問題がからみ、それをさらりと軽く描いていくというスタイル。こういうものはウディ・アレンあたりが作ると上手いんだろうけど、アイヴォリー監督の演出はどうにも歯切れが悪い。エピソードごとのメリハリがなくて話の流れがつかみにくく、全体がもつれた毛糸のようにからまり合ってほぐれないのだ。いろいろなエピソードを雑多に詰め込んで、その中で登場人物たちがそれぞれの思惑から右往左往する様子を面白おかしく描くという方向性はわかる。でもこれはエピソードを整理して、メインになるエピソードと脇に回るエピソードを切り分けてほしかった。

 話をわかりやすくするのなら、絵にまつわるエピソードを中心に置いて、ふたつの家族による「お宝争奪戦」というストーリーにしてもいい。あるいはレスリー・キャロンとストッカード・チャニングを両陣営の中心に置いて、フランスとアメリカの文化的なギャップを対比させるコメディにしてもよかった。いずれにせよ、ストーリーの軸はひとつか、せいぜい2つでいい。そこから小さなエピソードを交通整理だ。この映画はあれこれ手を出しすぎて、結局は何も実りが得られない作品になっているように思う。

(原題:Le Divorce)

5月公開予定 有楽町スバル座他・全国順次ロードショー
配給:20世紀フォックス
2003年|1時間58分|アメリカ、フランス|カラー|シネマスコープ|ドルビーSR、SRD
関連ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/ledivorce/
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