ジェニファ

涙石の恋

2004/04/01 イマジカ第2試写室
コメディ部分は面白いがラブストーリー部は話がわからん!
映画の最後で物語が空中分解している。by K. Hattori

 豊かな田園風景の広がる長野県のある町に、善福寺という古い寺がある。面倒見のよい篤志家として知られていた先代住職が亡くなってしばらく後、ジェニファという少女がホームステイにやってくる。先代が生前に受け入れることを決めていた少女だが、残された家族には青天のへきれき。寺には修行中の若い僧が数人いるし、少々訳ありの少年もひとりあずかっているのだ。だが彼女は寺の一人娘・郁代とすぐにうち解け、住職夫妻や周囲の人々も彼女を自然に受け入れる。でもそんな人の輪の中から、ひとりだけ外れているのが、寺であずかっている例の少年だ。川辺の畑をひとりで黙々と耕し、近所の人たちから「少年A」と呼ばれる彼に、ジェニファは興味を持つのだが……。

 ヒロインのジェニファを演じているのは、ジーンズのCMでブラッド・ピットと共演していたモデルで女優のジェニファー・ホームズ。彼女は16歳の時に石川県で10ヶ月間のホームステイをしたことがあるそうで、物語の中にはその経験が少しは反映されているのかもしれない。しかし映画はラブストーリー&ファンタジー。犯した罪の大きさに押しつぶされそうになっている少年と、彼の心の痛みを受け入れ寄り添おうとするヒロインの恋の行方を、彼女がホームステイする寺の人々との交流を交えながら描いていく。

 監督は『MISTY』『あさきゆめみし』の三枝健起。脚本を書いているのは『パコダテ人』『風の絨毯』の今井雅子。三枝監督の映画ではこれまで兄の三枝成彰が音楽を担当していたが、今回は倉本裕基に交代している。少年Aこと隆志を演じているのは山田孝之。寺の住職夫婦に遠藤憲一と高橋ひとみ。娘の郁代に浅見れいな。

 物語は招かれざる客ジェニファに戸惑いながらも、やがて彼女を受け入れ変化していく住職一家のドラマをコミカルに描く部分と、ジェニファと隆志のぎこちなくも切実なラブストーリーが並行して描かれている。前者はなかなか面白い。でも後者はどうもチグハグだ。このラブストーリー&ファンタジーのパートに関しては、物語のアイデアも未整理・未消化なまま映画が出来上がっているように思う。特にジェニファが抱きしめられると消えてしまうという設定は、僕にはどうしても理解できなかった。最初に消えた時、ジェニファは直後にまた姿を現す。だとしたら最後に消えた彼女は、次にどこに現れるのか?

 そもそも抱かれると消えるという設定を、シリアスなドラマにしようとするのが難しい。これはどちらかと言えば、コメディ向けのアイデアなのだ。抱かれると消えるとするなら、キスではどうか。握手は平気なのか。そんな些細なことが、ひどく気になってしまう。ジェニファが消えた後、隆志はどうしたのか。留学生が突然消え失せたら、隆志はまた警察に呼ばれてしまうのではないか。どうもわからない。映画を作った人たちは、こうしたことが気にならないのだろうか。

5月下旬公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給:ウィルコ
2003年|1時間29分|日本、アメリカ|カラー|シネマスコープ|ステレオ
関連ホームページ:http://www.jenifa.jp/
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