UNDEAD

アンデッド

2004/03/04 TCC試写室
オーストラリアの田舎町が突然ゾンビに埋め尽くされる。
低予算・高品質の新しいゾンビ映画。by K. Hattori

 オーストラリアの田舎町バークレーに、宇宙の彼方から大量の隕石が飛来。細かな破片が容赦なく住民たちの頭上に降り注いだ瞬間から、町の様相は一変してしまう。隕石に身体を貫かれた人間がゾンビになって人を襲い、襲われた人もまたゾンビになってしまうのだ。ゾンビは生きた人間の脳みそをムシャムシャ。からくもゾンビの襲撃を免れた“ミス・バークレー”のレネは、郊外の一軒家に逃げ込む。そこは町の人たちから変人扱いされているマリオンという男の家だった。「この世の終わりの始まりだ」とつぶやくマリオンの家には、それからさらに2組の男女が飛び込んでくる。ゾンビ軍団に襲われた若い夫婦と、ゾンビ襲撃になすすべもない警官と助手たちだ。やがてゾンビは家の中にも進入。レネやマリオンは家の地下室へと逃げ込むのだが……。

 監督はこれが長編デビュー作のスピエリッグ兄弟。監督も無名なら出演者も無名。それでいながら、特殊効果やCGはそれなりのクオリティに仕上がっているように思う。なんとこの映画のCGは監督自らパソコンで作ったのだとか。最近のコンピュータはすごいなぁ。

 隕石の影響で住民がゾンビ化するという設定は、ロメロの『ゾンビ』(アルジェント編集版)でも使われていたネタ。いわばこのジャンルの常套句だ。だがこの映画はその設定をちゃっかり頂いて、しかも最後にそれを別のネタにつなげる伏線にしているのが偉い。これはゾンビ映画の新機軸、新解釈だと思う。ただし同じネタを他人が使い回すことはできそうにないけれど……。

 ただしこの映画の見せ場はそうしたSFホラー的なネタの部分にあるわけではなく、やはり生き延びた人間とゾンビの死闘部分にある。隕石の衝突で人間の体に穴がポッカリあくとか、ゾンビの怪力パンチでいきなり人間の頭を拳が突き抜けるとか、車載の工具でゾンビが縦半分に切断されるとか、三連ショットガンでゾンビの胴体が(こちらは横に)切断されるとか、ゾンビの頭にスコップが突き刺さるとか、まぁ色々な残酷描写が続くわけです……。ところがこれが、それほど凄惨な感じにも見えない。ノリとしてはサム・ライミの『キャプテン・スーパーマーケット』などに近い。ゲラゲラ笑いはしないけど、観ていてついクスクス笑ってしまう場面がいくつもある。

 この映画の製作予算は日本円にして8千万円程度だと言うが、とてもそうとは見えないスケール感がある。飛行機はクラッシュするし、上空から大俯瞰で町を見下ろすシーンもあれば、群衆が大騒ぎするモブシーンも、軍用ヘリや緊急車両が周囲を埋め尽くすパニックシーンもある。時間としては短いが、これがとても効果を生んでいるのだ。この監督たちなら、今すぐにでもハリウッドで大作映画の監督を任せられそう。事実彼らの次回作は、ハリウッドでの製作が決まっているとか。案外それもまたゾンビ映画だったりして……。

(原題:UNDEAD)

3月20日〜4月2日公開予定 新宿ピカデリー4
配給:アートポート
2002年|1時間45分|オーストラリア|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.undead.jp/
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