恋人はスナイパー
劇場版

2004/02/26 東映第1試写室
内村光良主演の人気アクションドラマを映画化したもの。
これは脚本も演出もずいぶん手抜きだ。by K. Hattori

 テレビ朝日系でスペシャルドラマとして放送された、「恋人はスナイパー」(2001年10月11日放送)と「恋人はスナイパー2」(2002年12月24日)の続編となる劇場版。主演の内村光良と水野美紀、脚本の君塚良一など、主要なスタッフ・キャストはテレビ版をそのまま引き継いでいるようだ。今回は西村京太郎の「華麗なる誘拐」を原作にしているが、これは犯罪者が日本国民全体を人質にするというアイデアを借りた程度で、それ以外はドラマの設定を引き継いだものだと思う。

 六本木ヒルズで一般人を狙った狙撃殺人事件が起き、その後も日本各地で一般人を無作為に狙った狙撃事件が起きる。犯人は犯罪組織1211を名乗り、「これは日本人全員を人質にした誘拐だ。これ以上人質を犠牲にしたくなければ身代金5千億円を払え」と要求してくる。日本政府は中国の刑務所に収監されている元1211の殺し屋ウォン・カイコー(王凱歌)を呼び寄せて、この犯罪の捜査に当たらせる。船木との結婚を間近に控えた円道寺きなこは、ウォンの受け入れ担当者として彼の警備を担当するのだが……。

 僕はドラマ版を観ていないのだが、この劇場版はどうもできが悪い。最初に起きた狙撃事件で現場に居合わせたきなこが、犯人の投げて寄越した空薬莢を素手で握りしめるというのが、そもそもリアルな刑事ドラマとしてはまるでダメ。犯人のハン・ホアチンはテレビ版にも出演していたようなので、ここであえて証拠を保全せずとも話は通じるのかもしれないが、ここはハンカチかティッシュで薬莢を拾えばいいだけの話なのだ。銃器に対するマニアックなうんちく以前に、こういうところはきちんと演出してほしい。殺人犯のウォン・カイコーが死刑にならず、しかも日本の要請にしたがって簡単に日本に連れてこられるというのも変だけれど、これがないと映画が成り立たないからこれは観客が目をつぶるべき嘘。でもこの空薬莢に似た無神経な場面が、この映画には多すぎる。

 そもそも主人公たちがなぜ犯人グループに接近できたのか、その理由がよくわからない。地下鉄なんて数分に1本が走っているのに、たまたま飛び乗った地下鉄に爆弾が仕掛けられているという不思議。しかもその爆弾が時限装置で爆破されるのではなく、外部からの狙撃で爆破されるという回りくどさ。映画は終盤になるほどデタラメぶりが増していく。主人公たちは犯人の狙撃ポイントをいきなり見破ってしまう。ビルから落としたライフルはいつの間にか主人公の手に戻る。拳銃を持っているヒロインはなぜか銃やナイフに素手で立ち向かって傷だらけになるが、最後まで素手で戦うのかと思うと、いきなり銃を発射する。

 脚本の大バコだけ作って小バコで中身を煮詰めないまま、いきなり映画を撮り始めてしまったような粗雑さ。サスペンス映画に、こういう手抜きはよくないよ。

4月17日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映
2004年|1時間52分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.sniper-movie.com/
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