パーティ・モンスター
2004/02/10 東芝エンタテインメント試写室
マコーレー・カルキン主演で描く80年代から90年代のクラブ・カルチャー。
あまり愉快な映画ではないが同世代の僕には面白かった。by K. Hattori
1996年に“クラブ・キッズ”のマイケル・アグリが麻薬ディーラーのエンジェル・メレンデスを殺した事件の映画化……というより、『ホーム・アローン』シリーズでハリウッドの子役スター・ナンバー1の地位を極めたマコーレー・カルキンが、『リッチー・リッチ』以来9年ぶりに映画出演した作品。監督・脚本はこの事件をテレビドキュメンタリー「パーティ・モンスター」として1度取材し映像化したことのあるフェントン・ベイリーとランディ・バルバート。原作はマイケルやエンジェルとも親しかった元クラブ・キッズ、ジェイムズ・セント・ジェイムズの小説「ディスコ殺人事件(Disco Bloodbath)」。映画の中ではカルキンがマイケルを演じ、『オースティン・パワーズ』シリーズのセス・グリーンがジェイムズを演じている。
物語は「ディスコ殺人事件」を書き上げて本物のセレブの仲間入りをしたジェイムズが、テレビカメラの前で取材に応じているシーンから始まる。マイケル・アグリとの出会い。マイケルが企画した奇想天外なパーティの数々。マイケルの不思議な磁力に引き寄せられるように、次々と集まってくる若者たち。クラブでのドラッグの蔓延。麻薬漬けになっていくマイケル。マイケルの信奉者から麻薬ディーラーになったエンジェルは、なかなか代金を払わないマイケルともみ合う中で殺されてしまう……。
資料によるとマイケル・アグリは1966年生まれだというから、ちょうど僕と同じ年齢。田舎町出身のアグリはニューヨークで建築とファッションを学んだそうだが、僕もちょうど同じ頃に東京のデザイン学校でグラフィックデザインを学んでいた。この学校の特別講義で、当時のニューヨークのディスコ事情が紹介されたことがある。ニューヨークに教会を改装した「ライムライト」ができたり、オペラハウスを改装した巨大ディスコ「パラディウム」が開店した頃だ。マイケル・アグリはちょうどその頃、「ダンステリア」というクラブでボーイのアルバイトをしていたそうだ。
80年代というのは素人がいきなり有名人になれる奇妙な時代だった。アメリカでは奇抜なファッションのクラブ・キッズたちが脚光を浴び、日本では「夕焼けニャンニャン」に出演していた普通の女子高生たちが「おニャン子クラブ」を結成して大ブームを巻き起こしていた時代だ。映画の中ではクロエ・セヴィニーがテレビ出演中のクラブ・キッズを見て「かっこいい!」と言っていたが、日本では同じ頃、女子高生たちがおニャン子クラブに憧れてたわけだ。方向性はまったく違うのだが、普通の人がいきなり大スターになるという点で、クラブ・キッズとおニャン子クラブは同じ時代の空気を吸っていたように思う。
クラブとドラッグの親密な関係は日本でも普通のものになっているが、90年代後半から健康志向になったアメリカでは遠い昔話なのかもしれない。
(原題:Party Monster)
春公開予定 シネマライズ
配給:シネマパリジャン
2003年|1時間39分|アメリカ|カラー|1:1.85
ビスタ|ステレオ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.cinemaparisien.com/party_monster/