ケイナ

2004/02/03 GAGA試写室
残された人間たちを救うため、世界の果てまで旅をするひとりの少女。
フルCGで作ったフランス版の『風の谷のナウシカ』。by K. Hattori


 ヨーロッパ初のフルCGアニメと銘打った、3DCGを使ったSFファンタジーアニメ。物語の舞台は遠い宇宙の果て。ある二重惑星の近くで、巨大な宇宙船が爆発事故を起こした。それから数百年後。空中に浮かぶ巨大な樹木アクシスに寄生するように、少数の人間たちが暮らしていた。彼らは樹木から樹液を集めて、自分たちの「神」にささげる暮らしを続けていた。だが樹木からの樹液は年々少なくなるばかり。それが村の人間たちをひどく不安にさせている。村で育った少女ケイナは、夜ごと見る夢にうながされるように、自分たちの暮らす村の外側にある世界に思いを巡らせる。やがて神と交信する大祭司と対立したケイナは、たったひとりで村を離れることになる。そこでケイナが出会ったのは……。

 滅びかけた世界をたったひとりの少女が救うという物語は、明らかに宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の影響を受けている。空中を巨大な樹木が飛んでいるというのは、『天空の城ラピュタ』だろう。人間が未開化して奴隷になっているのは『猿の惑星』。エイリアンのデザインはギーガーの影響が露骨。監督・脚本のクリス・デラポートは、パリの造形美術大学出身の画家で、H・R・ギーガーや大友克洋、宮崎駿の大ファンなのだとか。彼は「ハート・オブ・ダークネス」というゲームのデザインにも参加しているそうで、この『ケイナ』も映画と同時進行でゲームが作られているという。

 映画はあちこちからの引用で個々のシーンに新鮮味はないのだが、1時間半というコンパクトな上映時間にすべての要素が詰め込まれていることもあって、冗長なところがあまりないのはいい。話の展開はかなり急テンポだが、ストーリーが破綻することもなく、なんとか最初から最後まで持ちこたえていると思う。もちろん食い足りないところはあるし、言葉で説明しすぎているところも、逆に言葉が足りないところもある。でもそれを圧倒的なビジュアルが補って、観客をきちんと映画のラストまで連れて行ってくれるのだ。

 しかしながらこれが1本の映画としてどうかというと、僕にはどうも……。やっぱりこれって「フランスでもこの程度できます」というショーケースに過ぎないんじゃないだろうか。(日本のCGアニメで言うと、日本テレビが作った『海のオーロラ』みたいなもんかな。比較の対象が悪すぎるような気もするけど。)CGで人間をリアルに表現するなら、既に『ファイナル・ファンタジー』がきわめてリアルなフルCGアニメとして存在するわけで、今さら『ケイナ』レベルでは驚くことがない。
 
 結局この映画は、ゲームと同時製作という点がユニークなのかもしれない。普通の映画では、映画とゲームのキャラクターが完全に一致することは絶対にない。でもこの映画は、映画とゲームがキャラクターデザインのレベルで完全に一致するのだ。これはゲームプレイヤーには嬉しいでしょう。

(原題:Kaena: La prophetie)

3月6日公開予定 K's Cinema
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2003年|1時間31分|フランス|カラー
関連ホームページ:
http://www.kaena.jp/

DVD:ケイナ
関連ゲーム:ケイナ
関連DVD:クリス・デラポート監督
関連ゲーム:Great Series ハート・オブ・ダークネス

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