ゼブラーマン

2004/01/22 東映第1試写室
哀川翔・三池崇史・宮藤官九郎のコラボレーションは期待はずれ。
この映画を誰が面白がって観るのだろうか? by K. Hattori


 哀川翔の映画出演100本記念作品は、彼自身初めてだという変身ヒーロー映画だ。「100本目はぜひ一緒に」と声をかけられた三池崇史監督が、一度も仕事したことがないくせに周囲の噂と評判から脚本に宮藤官九郎を指名。こうして日本映画ファンなら誰もが気になる最強チームができあがった。変身ヒーローものの老舗としてのプライドからか、この映画にかける東映の意気込みは並々ならぬものがある。コミック誌やプロレス団体とのタイアップなど、これまでにない仕掛けをあれこれ実施した結果が、集客にどの程度結びつくかも注目だ。とにかく映画の内容以前に、この映画は事件なのだ!

 小学校教師の市川新市は公私にわたるダメ男。学校では授業が下手で生徒が言うことを聞かず、家でも家族全員からないがしろにされている。そんな彼の唯一の趣味は、少年時代にテレビ放送されていた変身ヒーロー「ゼブラーマン」のコスプレだった。手製のコスチュームを身にまとい、姿見の前でポーズを決めたり必殺技の方を演じているうちは良かったのだが、やがて彼はその姿のまま外出したいと思い始める。時を同じくして、新市の住む町には謎の生命体が異常繁殖。防衛庁特殊機密部による調査が進む中、町では奇妙な現象が次々に起き始める。その現場では「ゼブラーマン」の目撃情報が……。

 面白いかつまらないかと問われれば「面白い」のだが、すごく面白いかと念押しされると、弱々しく「それほどでも」と答えざるを得ない映画だ。その理由はこの映画に登場する「ゼブラーマン」が、日本の変身ヒーローよりアメコミ的な変身ヒーローだからかもしれない。主人公がコンプレックスのかたまりだったり、コスチュームを自作していたりする姿は、「仮面ライダー」や「ゴレンジャー」より「スパイダーマン」や「バットマン」に近いんじゃないだろうか。なまじ幼時体験に東映の変身ヒーローが刷り込まれているだけに、この「ゼブラーマン」から受ける違和感は大きい。

 物語はゼブラーマンの活躍と、防衛庁特殊機密部の秘密調査が同時進行していく構成になっているのだが、ゼブラーマン=市川新市のすっとぼけた活躍ぶりに比べると、防衛庁側の行動には魅力が乏しいように思う。こちらがもう少し面白くなると、ゼブラーマンと防衛庁職員の行動がドラマをパワフルに引っ張って行けたと思うのだが……。むろんこの映画を「脱力系ギャグ」という尺度で評価することもできるだろう。でもそれにしては、映画内部にテンションの高い部分がほとんどないため、映画全体が弛緩しきっているためメリハリがまったくない。脱力がギャグになるのは、一方に緊張するシーンを置くからだと思うのだけれど……。

 期待が大きかっただけに、この内容には大いに不満。せめて親子連れが楽しく観られる映画にしてくれれば良かったのに……。これじゃあ、ちょっとなぁ……。

2月14日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映
2004年|1時間55分|日本|カラー
関連ホームページ:
http://www.zebraman.jp/

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