ゴジラ×モスラ×メカゴジラ
東京SOS

2003/12/14 日劇2
前作『ゴジラ×メカゴジラ』の正統な続編映画。
映画冒頭に掲げたテーマが宙ぶらりん。by K. Hattori


 東宝のお正月番組として定着している『ゴジラ』シリーズだが、ここ3年は『とっとこハム太郎』との2本立て興行。『ハム太郎』と組む前年に『ゴジラ×メガギラスG消滅作戦』で13億に過ぎなかったシリーズの興収は、01年の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』で一気に25億円に倍増した。『ゴジラ』シリーズは今でも東宝の看板番組であるに違いはないのだが、観客を引きつけているのは『ハム太郎』の方なのではないだろうか。映画館では『ハム太郎』を楽しげに観終えた子供たちが、引率の保護者に向かって「ねえねえ『ゴジラ』観るの?」とそのまま帰ってもいいような口ぶりだし、『ゴジラ』の後には「『ハム太郎』に比べて『ゴジラ』が長すぎる〜!」と不平不満を口にしている光景が見られた。『ゴジラ』と『ハム太郎』は別番組にした方がいいような気がするなぁ。

 例によって僕は『ハム太郎』で寝てしまったが、『ゴジラ』もわざわざ起きてしっかり観ていなければならないほどのシロモノではなかったと思う。ゴジラ上陸に日本政府がどう対応するかという戦闘シミュレーションなら前作で十分だったし、今回はモスラが出てきたことでシミュレーションとしての面白さも半減していると思う。観ていてワクワクするようなシーンが時々ないわけでもないのだが、それがドラマと結びついて観ている者の気持ちを熱くさせるには至らない。今回の映画は、脚本がまるで中途半端なのだ。

 かつてインファント島を探検して小美人やモスラと出会った中條信一のもとに、43年ぶりに小美人が現れる。ゴジラの骨から作られた機龍(メカゴジラ)に呼び寄せられて、日本には何度でもゴジラがやってくる。日本が機龍を破棄するならば、日本の守りはモスラが引き受けるだろう……。そんな小美人のメッセージを中條は政府に届けるのだが、目の前に迫ったゴジラの危機に対して、政府は機龍を手放すことができないでいた。

 物語のテーマそのものは、かなり現代的なものだと思う。人間は一度手にした「力」を放棄することができるのだろうか? 目の前に迫る外敵に対して、丸腰で対峙するだけの勇気を持つことができるのだろうか? 映画の中では「力」を機龍というマシンで象徴しているわけだが、これは人間が手にしてきたすべての兵器の象徴でもあるのだ。冷戦が終わって「核抑止力」が無効になっても、世界の国々はいまだに核兵器を廃棄できないでいる。アメリカの銃社会が外敵に対する「恐怖」によって成り立っていることは、マイケル・ムーアが『ボウリング・フォー・コロンバイン』で指摘している通りだ。

 問題提起としては鋭いこの映画だったが、ゴジラと機龍を戦わせるという「怪獣映画」の必然が、社会的な問題提起に対する解答をうやむやにしてしまった。この問題に対する解答は、来年の『ゴジラ』最新作へと引き継がれていくのかいかないのか……。

12月13日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
(2003年|1時間28分|日本)
関連ホームページ:
http://www.godzilla.co.jp/

DVD:ゴジラ×モスラ×メカゴジラ/東京SOS
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