問題のない私たち

2003/11/20 東映第2試写室
女子中学生のいじめをテーマにした青春映画。黒川芽以主演。
映画の後味は爽やかだが、少しきれい事すぎるかも。by K. Hattori


 『クラヤミノレクイエム』でデビューした森岡利行監督の新作は、人気少女マンガを原作にしたアイドル映画だった。主演は黒川芽以、沢尻エリカ、美波、森絵梨佳など、グラビアやCMで知られる美少女アイドルたち。この手のアイドル映画は、女の子がきれいでもお芝居はまるでダメダメという事例になりがちなのだが、劇団ストレイドッグの主催者で作・演出家でもある森岡監督は、若い女の子たちの演出も手慣れたものの。適材適所のキャスティングと演出で、今時の女の子たちの日常描写にリアリティを感じさせてくれるのだ。

 この映画で問題があるとすれば、主人公の父親を演じた勝村政信の芝居が、やや紋切り型になってしまったことではないだろうか。この映画のテーマは学校を舞台に繰り広げられる壮絶ないじめ問題にあるわけだが、その背後でヒロインの心に強い影響を与えているのが父親の再婚にあるのは確かだ。父親は子供に無関心なわけではないが、自分自身の目の前にぶら下がった新しい幸福をつかむことに夢中で、子供が抱え込んでいる問題にまったく気を配ってやれない。この善良だが鈍感な父親の気持ちを、勝村政信が表現できているとは思えない。このポジションに彼をキャスティングするなら、脚本段階でもう少しこの役に味付けをしておく必要があったようにも思う。

 中学3年の1学期。笹岡澪(みお)は仲のよい数人の仲間たちと一緒に、同じクラスの潮崎真莉愛をいじめている。クラスの全員はこのいじめを見て見ぬふり。教師もこんな状態を、知っているのかいないのか……。だが澪のクラスに転校生の新谷麻綺がやってきた時、澪の置かれている立場は逆転する。麻綺をリーダーにして、澪に対する執拗ないじめが始まったのだ。あまりの凄惨さと過酷さに一度は自殺すら考える澪。だがそんな彼女をかばったのは、かつて自分がいじめていた真莉愛だった。そんなある日、いじめは突然ピタリと止まってしまう。しおらしく謝罪を口にする麻綺に戸惑いながらも、かつて真莉愛が自分にそうしてくれたように、澪は彼女を許してやることにする。だがこの謝罪は、麻綺の用意周到な罠でしかなかったのだ!

 映画は夏休みをはさんで二部構成だ。前半はいじめがテーマで、映画の後半は教師による生徒いびりが描かれる。映画がこうして前半と後半に割れてしまっているのは、この映画が持つ大きな欠点かもしれない。この映画には2つの大きな物語と2つのクライマックスがあり、それぞれが別々に成立しているのだ。1本の映画としては、この前後半をつなぐ別のエピソードが不可欠。本来ならそれが父親の再婚にまつわるエピソードなのだろうし、映画のラストシーンでヒロインが父と和解することからも、監督はそれを十分に意図しているように思える。残念なのは、父娘のエピソードに映画全体を支えるボリュームがないことだ。その原因は、やっぱり勝村政信かなぁ……。

2004年陽春公開予定 ポレポレ東中野他
配給:レジェンド・ピクチャーズ
(2003年|1時間38分|日本)
ホームページ:
http://www.問題のない私たち.net/

DVD:問題のない私たち
原作:問題のない私たち(木村文・牛田麻希)
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