ジャスト・マリッジ

2003/11/18 日比谷スカラ座2
新婚旅行で大げんかになったトムとサラの関係は修復できるか?
アメリカ版成田離婚をモチーフにしたラブ・コメディ。by K. Hattori


 出会ったその日に情熱的な恋に落ちたトム・リーザックとサラ・マクナニー。ふたりは出会ってひと月で同棲を始め、1年もたたないうちに結婚を決める。だがこの結婚に周囲の人々は渋い顔。「まだ若すぎる」「交際期間が短い」という理由もあるが、サラが大富豪のお嬢様でトムははラジオ局の交通情報アナウンサーという、いささか不釣り合いなカップルに対する周囲の心配ややっかみもあったのだ。だが恋愛に障害は付きもの。ふたりは無事に結婚式を済ませ、新婚旅行に出たのだが……。

 新婚旅行先でトラブルが起き、帰ってきた途端に離婚してしまう「成田離婚」というのがあるそうだが、この映画はアメリカ版成田離婚の物語だ。もちろん帰ってくる空港は成田ではないが、空港ロビーで激しく互いを攻撃し、もはやふたりの関係は修復不可能な状態になってしまうのだから同じこと。映画はここからふたりの過去を回想して、最後はめでたく元のさやに戻るという構成。新婚ほやほやのカップルにいかにしてひびが入り、関係が瓦解してしまうかという話なのだが、これを単にドタバタした痴話げんかにしてしまったのが物足りない。

 映画の中では結婚生活の大先輩たちが、「新婚から3ヶ月が一番の正念場だ」とか「夫婦のアルバムに辛い時期の写真はないものだ(幸せなだけの夫婦などいない)」などと味のある言葉を語っているのだが、それが若いカップルの腑に落ちる実感として映画の中で生かされていないように思う。結局この映画の中では、家族に結婚を反対されようと、新婚旅行に行く飛行機の中でトラブルが起きようと、泊まったホテルを追い出されようと、雪の中で一夜を明かそうと、おんぼろホテルに泊まる羽目になろうと、それらはすべて笑い話になる。そのかわり問題になるのは、妻の過去の男性関係や、夫の浮気だったりするわけだ。こういうのを「痴話げんか」と言うのです。

 新婚夫婦のつまらない痴話げんかを、「つまらない」という理由で軽く見るのはもちろん間違いだ。でもこうした「つまらない痴話げんか」から話をまったく広げぬまま、最後に「愛しているからそれでOK」に行き着いてしまうのは、映画自体が「つまらない」と言われても仕方がない。どんなに「つまらない」素材からでも、それを十分に掘り下げていけば面白い映画はできるような気がするのだけれど……。

 僕はこんな映画じゃハラハラもドキドキもできやしない。この程度の問題で別れる夫婦なら、勝手に別れりゃいいのです。結婚にはもっといろいろな問題があるだろうし、痴話げんかをきっかけにして、夫婦間に横たわるさらに大きな障害が露見することだってある。そうしたことまで踏み込まないこの映画は、若者向けというよりお子様向けの映画だよ。でも逆に言えば、こうした映画にときめかない僕は、ずいぶん年を取ったってことなのかもね。あ〜あ、ちょっとショックだなぁ。

(原題:Just Married)

11月1日公開 日比谷スカラ座2他・全国洋画系
配給:20世紀フォックス
(2002年|1時間37分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.foxjapan.com/movies/justmarried/

DVD:ジャスト・マリッジ
輸入ビデオ:Just Married
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