ギャンブル・プレイ

2003/11/18 メディアボックス試写室
俳優も良くて話も面白そうなのに、物語がスムーズに流れない。
意味不明なストップモーションはなんなのか。by K. Hattori


 1955年にジャン=ピエール・メルヴィルが監督した『賭博師ボブ』を、ニール・ジョーダンの脚色・監督で再映画化したものだという。『賭博師ボブ』はこれ以前にもハーベイ・カイテルとスティーブン・ドーフ主演で『バッド・デイズ』という映画になっているはずなので、これが2度目のリメイクということになるのかもしれない。(IMDbでは『バッド・デイズ』と『賭博師ボブ』の関係について明記されていない。)『賭博師ボブ』のオリジナルは未見だが、資料などを見る限りでは、今回の映画の方が『賭博師ボブ』に近いと思う。ボブ、アン、ポーロといった主人公たちの名前も、『賭博師ボブ』をそのまま受け継いでいる。

 世界的なリゾート地リヴィエラ。かつて大物ギャンブラーとして勇名をはせたボブだったが、いつしか運に見放されて今では酒とクスリが手放せない酔いどれオヤジに身を持ち崩していた。だがそんな彼が人生最後の勝負に出る瞬間がやってくる。昔の仲間ラウルが持ち込んできた、モンテカルロの巨大カジノ襲撃計画だ。グランプリレースの前日に金庫から大金をいただく……と見せかけて、カジノが所有する世界の名画をごっそりかっぱらおうという大胆不敵な計画。ボブは酒とクスリをきっぱり断って、この仕事の準備を始める。だが警察や町のやくざ連中はボブの変身ぶりに新たな「仕事」のにおいをかぎつけ、その周辺を探り始めるのだった。

 主人公ボブを演じるのは大ベテランのニック・ノルティ。彼を逮捕しようと監視する刑事にチェッキー・カリョ。ボブが持っていたピカソの絵を担保に金を貸す男にレイフ・ファインズ。他にエミール・クストリッツァやジェラール・ダルモン、サイード・タグマウイなどクセのある役者が大勢出演。オヤジ濃度がかなり高い配役ながら、映画ファンならこの顔ぶれでジョーダン監督がどんな映画を撮るのか楽しみにするはず。ところが今回僕は、この映画にあまり乗れなかった。

 そもそも話以前の問題として、僕はこの映画の編集がうっとうしくて仕方なかった。シークエンスの切れ目やカット尻で、画面が一瞬凍り付いたようにストップモーションになることがしばしばなのだ。このストップモーションの意味が、僕にはまったくよくわからない。映画の終盤ではワンカットの途中で画面が一瞬ストップしたりもするし、ラストシーンのジャンプカットなどから判断するに、これは意図的な演出のようでもある。だがこの演出にどんな効果があるのか僕には理解不能だ。

 映画ではスローモーションにもストップモーションにも、常に何らかの意味があるものだ。観客はその意味を読み取りながら映画を観る。画面がストップすれば、その瞬間に観客の思考も一瞬立ち止まってその意味を考えるのだ。頻繁に意味もなくストップモーションを繰り返した結果、この映画の流れはぎくしゃくして先に進まなくなっている。

(原題:The Good Thief)

1月31日公開予定 銀座シネパトス
配給:20世紀フォックス 宣伝:メディアボックス
(2002年|1時間49分|イギリス、フランス、カナダ、アイルランド)
ホームページ:
http://www.foxjapan.com/

DVD:ギャンブル・プレイ
輸入ビデオ:The Good Thief
サントラCD:The Good Thief
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