ハッピーエンド

2003/10/31 映画美学校第2試写室
妻が密かに昔の恋人と密会していることを知った夫は……。
べたべたしたメロドラマかと思ったら、最後に急展開。by K. Hattori


 失業した夫のかわりに家計を支える妻チェ・ボラは、職探しをしている夫と幼い子供を家に置いたまま、頻繁に恋人との情事を楽しんでいる。相手は夫と結婚する前に付き合っていた、元恋人のキム・イルボム。家庭での生活とはまったく別の領域で、彼女はこの情事がもはや生活の一部にさえなっている。夫とのセックスでは得られない充足感を、恋人のイルボムは与えてくれるのだ。互いに肉体だけの交渉と割り切って、肌と肌を重ね続けるボラとイルボム。だがふとしたきっかけから、この関係が夫のソ・ミンギに知られることになった。妻の不倫に深く傷つきながらも、自分が妻と恋人の関係を知ったことを胸に秘めようと決めるミンギだったが……。

 映画の冒頭から激しいベッドシーンがあるなど、セクシーな描写が受けて韓国で大ヒットした不倫ドラマ。映画前半は「家庭がありながら元恋人との不倫に身を焦がす人妻」というメロドラマ調。中盤からは元恋人の方が彼女に本気になってきて、彼女の家庭を壊してでも自分のものにしたいと強引な行動に出始めてハラハラさせられるのだが、そんな不倫相手の行動が危なっかしさのピークに達したとき、それまでダンマリを決め込んでいた夫の側が思わぬ行動に出て、映画を観ているこちらはちょっとびっくり。

 夫が行動に出てからは「なるほどこういう映画だったのか!」と納得できるのだが、そこに至までがかなり物足りなく感じられる。この映画は前半の主人公が不倫中の妻で、中盤以降は主人公が夫の側にバトンタッチされる。しかしこのつなぎ目が、どうやらうまく行っていないらしい。主役が夫に交代した後も、観客は妻の視点で物語を追い続けてしまうのだ。そのため本来なら主役として物語の中央に出てこなければならない夫が目立たず、映画の脇の方でぐずぐずと煮え切らない態度を見せているだけに思えてしまう。

 なぜ妻は元恋人と別れたのか。なぜ彼女は夫と別れて、元恋人と再婚することを考えないのか。これらについてあれこれ想像を巡らせることは可能だが、こうしたことは観客に考えさせる以前に、映画の中できちんと説明しておくべき内容だろう。「別れられない理由」そのものがこの映画のテーマなら、それは劇中で直接描くべきではない。しかしこの映画のテーマは、それとはまったく別のところにある。ここはもったいぶらずに、かくかくしかじかの理由でこうなっているのだと明確にしておいた方が、物語の流れはずっとスムーズになる。

 同じ脚本でも妻の不倫をもっと軽く描くなら、こうした点は気にならないかもしれない。この映画は濃密なベッドシーンなどで前半のウェイトをかなり大きくなり、結果としてドラマが重たくなって話のコロガリが悪くなっているようにも思える。このフラストレーションがあるためか、物語がどんどん流れはじめる終盤には、便秘が解消したよう爽快感がある。

(原題:Happy End)

2004年正月第2弾 新宿武蔵野館
配給:GAGAアジアグループ 協力:ワーナー・ホーム・ビデオ
宣伝:ムヴィオラ
(1999年|1時間39分|韓国)
ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

DVD:ハッピーエンド
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