スカイハイ
[劇場版]

2003/10/24 東映第1試写室
釈由美子主演の人気ドラマを劇場映画にスケールアップ。
北村龍平監督の限界点が見える映画だ。by K. Hattori


 釈由美子主演でドラマ化された同名人気コミックの映画版。主演はドラマ版と同じ釈由美子で、監督はドラマ版の最終話(第十死)で演出を手がけた北村龍平が担当している。僕は原作もドラマ版も見ていないので内容が理解できるか不安もあったのだが、今回の映画についてはその心配は無用。映画は釈由美子が怨みの門番イズコではなく、人間の女性・斉木美奈役で登場するのだ。映画は彼女がどうやって怨みの門の門番になったのかという、ドラマ版に先立つ物語になっているようだ。

 北村龍平監督はアクション志向の強い若手有望株として今や引っ張りだこ状態なのだが、僕自身はこの監督が特別うまいともすごいとも思えない。最初に『ヒート・アフター・ダーク』や『VERSUS』を観たときは、日本映画界には珍しい徹底した活劇路線に痛快さを感じたのだが、結局この監督はそれだけの人なのだ。アクションはともかく、この人はドラマが決定的に弱い。キャラクターが類型的になってしまうのは致命的だ。売り物のアクションにしても、長丁場になるとワンパターンぶりが目について飽きてしまう。

 ドラマの欠点は、この監督がいつも同じ脚本家と組んでいることにも原因があるだろう。今回の映画で脚本を書いている桐山勲は、『あずみ』『ALIVE』『荒神』などでも北村監督と組んでいる。同じ脚本・監督コンビで面白い映画が撮れるならいいけれど、このコンビが作った映画の場合はどうなんだろうか。僕は『ALIVE』を未見なのだが、他の作品や本作を観る限り、このコンビはもう解消した方がいいと思う。ひょっとしたら監督のリクエストかもしれないが、この脚本家が作りたい世界と北村監督の持ち味が、うまくかみ合っていないのではないだろうか。今回の映画では監督と脚本家が互いに好き勝手なことをやっているようで、相互に触発し合ったり歩み寄ろうという態度がまるで見えない。

 最近は「北村龍平=チャンバラ」という図式がすっかり定着しているが、デビュー作の『ヒート・アフター・ダーク』ではハードなガンファイトをたっぷり見せてくれた監督でもある。『あずみ』のような時代劇では制限があるが、今回のような映画なら、チャンバラに限らずもっといろいろなアクションを盛り込んでもよかったはずだ。チャンバラにこだわり、しかもそれを女性同士に演じさせるという演出上の制限を、なぜ自らに課してしまうのだろう。これでは立ち回りのマンネリ化が避けられないではないか。

 若い監督になかなか活躍のチャンスが与えられない日本映画界で、北村監督はかなり恵まれたポジションにいる。しかしここ最近の作品を観る限り、彼がみすみす狭くて小さな世界に迷い込み、持てる力を使い果たそうとしているように思えて仕方がない。北村監督はこの程度の映画に満足せず、自分の持ち味が生かせる企画や脚本を、もっと真剣に探してみるべきだと思う。

11月8日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映
(2003年|2時間2分|日本)
ホームページ:
http://www.skyhigh-movie.com/

DVD:スカイハイ
主題歌CD:HORIZON (HYDE)
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原作:スカイハイ(高橋ツトム)
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