キル・ビル
Vol. 1

2003/10/14 丸の内ピカデリー1
クエンティン・タランティーノのB級センスが全開になった娯楽大作。
エンドロールに流れる梶芽衣子の「怨み節」にしびれる。by K. Hattori


 クエンティン・タランティーノ6年ぶりの新作は、徹頭徹尾アクションで押しまくるB級テイストのオバカ映画だった! 犯罪組織でも名うての殺し屋ブラックマンバとして恐れられていたヒロインは、組織を抜けて結婚しようとしたところをボスのビルと殺し屋たちに襲われる。奇跡的に生き延びた彼女は4年の昏睡から目を覚ますと、自分からすべてを奪ったボスと殺し屋たちを葬ることを誓う。前後編あわせて3時間以上になるという大作で、この前編の上映時間は1時間53分。後編は来年公開されるという。

 僕はタランティーノの前作『ジャッキー・ブラウン』をそれほど面白く思わなかったので、その後彼が監督としての仕事から遠ざかったときは「タランティーノももうダメか」と思った。しかし今回の映画でその思いはきれいさっぱり消え去りました。タランティーノはやっぱりスゴイ! 大アクションに力が入りすぎて、観ているこちらが思わず笑ってしまうというこの感覚。カルト映画監督の石井輝男にも通じる、血わき肉躍る大活劇とトホホ感覚の見事な融合。血まみれの手足が飛び、首がもげて切り口から大量の血糊が噴出する残酷絵巻の中に、強引に割り込むギャグとユーモア。

 物語はヒロインのザ・ブライド(本名不詳)の一人称視点で語られていくのだが、その合間合間に回想シーンや脇のエピソードを挿入させるタイミングが抜群。ルーシー・リューが演じるオーレン・イシイの生い立ちをアニメで描いたかと思えば、突然舞台が沖縄に飛んで千葉真一が奇妙な寿司屋のオヤジになっているといった具合なのだ。物語の時系列を大胆に入れ替える手法は『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』でも高く評価されたわけだけれど、今回の映画でもその豪腕ぶりは健在。物語は数ヶ月から数年という時間をポンポン自由に前後しながら、ドラマを過激なクライマックスへと運んでいく。

 映画のあちこちに意図的に大きなアラが見えるように作られていて、そのぶっ壊れた感覚が映画の弾むような躍動感を生み出している。映画の中では登場人物のほぼ全員が、英語と日本語のチャンポンで会話している。千葉真一のブロークンイングリッシュに笑ったと思えば、ユマ・サーマンとルーシー・リューが日本語で啖呵を切ったりするのだからたまらない。アクションシーンは日本刀での大チャンバラ。アクション監督は香港のユエン・ウーピンだが、1対1の対決では動き続ける香港流活劇ではなく、動と静のコントラストを生かした日本風のチャンバラ活劇になっているのがいい。それでいて乱闘シーンやゴーゴー夕張との対決シーンは、ワンチャイ・シリーズを彷彿とさせる香港流活劇のテイストを忍び込ませたりもする。

 音楽のセンスもたまらん。特に梶芽衣子! 「修羅の花」には笑ったし、エンドロールで「怨み節」を1曲丸ごと流してしまうのにはしびれました! これが合いすぎ!

(原題:Kill Bill: Vol. 1)

10月25日公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2003年|1時間53分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.killbill.jp/

DVD:キル・ビル
サントラCD:キル・ビル |Kill Bill
関連CD:怨み節(梶芽衣子)
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原作洋書:Kill Bill (Quentin Tarantino)
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関連書籍:「キル・ビル」&タランティーノ
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