レッド・サイレン

2003/08/28 映画美学校第1試写室
ジャン=マルク・バール主演のアクション・ロードムービー。
殺し屋たちがホテルを襲撃するシーンはすごい迫力。by K. Hattori

 12歳の少女アリスが自宅地下室で見つけた1枚のDVD。そこにはアリスと仲のよかったメイドが、残虐な拷問の末に殺される一部始終が撮影されていた。母親エバがこの殺人に関わっていると確信したアリスは、DVDを警察に持ち込んで保護を求める。だが多くの企業を経営し、政財界に太いパイプを持つエバに警察はなかなか手出しができない。アリスは母親を恐れて警察から失踪し、幼い頃に別れたきりの父親に会うためポルトガルに向かう。そんな娘を取り戻すため、エバは殺し屋を雇って追跡を開始。アリスは偶然知り合ったヒューゴーという男に保護されるが、じつはこの男、東欧の戦場で戦ってきた凄腕の傭兵だった。ヒューゴーはアリスを無事父親の元に届けるため、彼女と一緒にポルトガルを目指す。だがエバの雇った殺し屋軍団はその動きを察知し、アリスたちをポルトガルで待ち伏せるのだった……。

 フランスの人気作家モーリス・G・ダンテックのベストセラー「La Sirene Rouge」(邦訳なし)を、『EXITイグジット』のオリヴィエ・メガトン監督が映画化したもの。『EXITイグジット』は派手な絵作りが先行する映画だったが、今回の映画はきちんとストーリーを語りながら、その中でビジュアル表現のスパイスを効かせてメリハリを付けている。少女アリスを演じるのはこれがデビュー作となるアレクサンドラ・ネグラオ。彼女を守る傭兵ヒューゴーを演じるのは、『グラン・ブルー』のジャン=マルク・バール。アリスを守ろうとする女性刑事アニータ警部補を『トリプルX』のアーシア・アルジェントが演じ、怪物のような母親エバをフランセス・バーバーが演じている。フランス映画だが中身は英語作品になっている。

 殺人技術に長けた心に傷を持つ中年男と殺し屋から逃れようとする少女という組み合わせは、リュック・ベッソンの『レオン』を連想させる。だがこの映画はそこにロードムービーの要素が加わって、『レオン』とはまったく毛色の違う映画になった。劇中では目的地のリスボン以外の場所が明確になっていないが、映画序盤の冷たい風景と映画終盤のリスボンの風景とでは映像のタッチがガラリと変わる。こうした変化こそが「移動」のダイナミズムなのだ。2人組の殺し屋による追跡から始まり、主人公たちが移動するのに合わせて次々に強敵が現れては消えていく。最後はボスキャラの登場でフィニッシュ。こうした構成はアクション・シューティングゲームのようでもある。

 アリスとヒューゴーの旅は面白く描けているのだが、アニータ警部補の扱いが中途半端なのは残念。彼女の抱える問題がわかりにくいので、最後に彼女が「警察を辞めようか」とつぶやくシーンもいささか唐突に感じられてしまう。ジャン=マルク・バールが演じるヒューゴーのキャラクターは魅力的なので、シリーズ化してもいいような映画だとは思うけれど……。

(原題:La Sirene rouge)

9月下旬公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:コムストック
宣伝協力:FREEMAN
(2002年|1時間58分|フランス)
ホームページ:
http://www.comstock.co.jp/

DVD:レッド・サイレン
関連DVD:オリヴィエ・メガトン監督
関連DVD:ジャン=マルク・バール
関連DVD:アーシア・アルジェント
関連DVD:アレクサンドラ・ネグラオ

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