ウェルカム トゥ コリンウッド

2003/07/10 TCC試写室
濡れ手に粟の儲け話に群がる間抜けなど路傍たちの運命は?
クセモノ俳優たちが勢ぞろいしたクライム・コメディ。by K. Hattori

 仕事に失敗して捕まった間抜けな自動車泥棒コジモは、刑務所の同房になった男から濡れ手に粟のオイシい儲け話を聞かされる。一攫千金を夢見るコジモは面会に現れた情婦のロザリンドに事情を話し、自分の身代わりで刑務所に入ってくれる人間を探し始める。ところがロザリンドが身代わり探しの必要性からほんの少し事情を漏らしただけで、コジモがムショの中でなにやらウマイ儲け話をつかんだとういう話はあっという間に知れ渡ってしまう。かくして刑務所の外では、コジモ抜きでお宝強奪作戦が始動。それを知ったコジモは刑務所を脱走して、裏切った連中に復讐しようとするのだが……。

 個性豊かな悪党たちが力をあわせ、難しい金庫強盗に挑むという定番の犯罪映画。しかしこの映画、登場する泥棒たちが全員三流以下の小悪党ばかり。頭は悪い。度胸はない。オマケに体力も人並み以下。仲間を平気で裏切るし、秘密も守れない。それでも本人たちには自分たちが小物だという自覚がないのだから、これはもうコメディになるしかない。ウディ・アレンの『おいしい生活』に出てくる間抜けな泥棒グループが、そのままスピンアウトしたような爆笑クライム・コメディなのだ。

 刑務所で儲け話をつかむコジモ役に、プエルトリコ出身の個性派俳優ルイス・ガズマン。塀の外でせっせと強盗計画を進める男たちに、サム・ロックウェル、ウィリアム・H・メイシー、マイケル・ジーター、アイザイア・ワシントンといった顔ぶれ。主役クラスの俳優はほとんど出演しないが、大作映画で時として主役を食う芝居を見せる脇役俳優たちがずらりと雁首そろえている様子は壮観。(ゲストスターとして本作のプロデューサーであるジョージ・クルーニーが顔を見せているのだが……。)

 映画の時代背景はまったくわからないようにぼかされていて、映画全体が泥棒を主役にしたファンタジーになっている。雰囲気としては1950年代を中心に前後40年か50年ずつ、20世紀初頭のサイレント映画から現代までの風俗を、自由にこね合わせて作った世界だ。音楽は古いジャズやシャンソン。舞台はクリーブランドということだが、画面の雰囲気はイギリス映画に近いくすんだ色合いになっている。

 そもそもコジモが刑務所で聞いた話事体がインチキ臭いし、普通の映画なら誰もがまずこの話事体の真偽を疑ってかかるところだろう。ところがこの映画に登場するのは全員が間抜けな二流三流の小悪党だから、このウマイ話を最初からまるで疑わない。登場人物たちは棚ボタ式に転がり込んできたこの儲け話に飛びついて、決してそれを離そうとしないのだ。このあくなき強欲と執着心こそが、この映画のテーマかもしれない。

 監督はアンソニー&ジョー・ルッソという、イタリア系の兄弟監督。彼らの才能にほれ込んだスティーブン・ソダーバーグが、ジョージ・クルーニーと共に製作に参加している。

(原題:Welcome to Collinwood)

8月23日公開予定 銀座シネパトス
配給:クライドフィルムズ
(2002年|1時間26分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.clydefilms.co.jp/collinwood/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:ウェルカム トゥ コリンウッド
サントラCD:Welcome to Collinwood
関連DVD:アンソニー&ジョー・ルッソ
関連DVD:サム・ロックウェル
関連DVD:ウィリアム・H・メイシー
関連DVD:アイザイア・ワシントン
関連DVD:マイケル・ジーター
関連DVD:ルイス・ガズマン

ホームページ

ホームページへ