完全なる飼育
秘密の地下室

2003/07/09 TCC試写室
しらたひさこをヒロインに迎えたシリーズ第4弾。相手役は山本太郎。
原作が新しくなって映画の雰囲気はずいぶん変わった。by K. Hattori

 孤独な男が女子高生を誘拐して自分の部屋に監禁し、やがてふたりの間に本物の愛が芽生えていく……という『完全なる飼育』シリーズの第4弾。前3作は松田美智子の「女子高校生誘拐飼育事件」というひとつの原作を、さまざまな切り口からアレンジした作品だった。今回は原作者の松田美智子に「秘密の地下室―完全なる飼育」という書き下ろし小説を書かせ、前3作のサスペンスとは毛色の違うミステリータッチの作品になっている。

 今回の主演は山本太郎としらたひさこ。監督は『ISOLA/多重人格少女』の水谷俊之。シリーズ全作に出演している竹中直人は、今回の作品にもゲスト出演して「シリーズの顔」としての役目を果たしている。秘密を抱えた老婆役に、大ベテランの加藤治子。僕はしらたひさこという女優をまったく知らなかったのだが、制服姿で化粧の濃い今風のギャル女子高生から、黒いワンピース姿、SM風の衣装、お女郎さんのような赤い着物、さらには幻想の中に登場する清楚な女子高生まで、ひとりで何役にも匹敵する変身ぶりを見せる。今後に注目したい女優さんだ。

 相手役の山本太郎はいつものエネルギッシュな芝居から一転して、最後の最後まで台詞らしい台詞がまったくない寡黙な役柄にチャレンジ。ただしこれは、どうもミスキャストに思える。本人がどう役作りしても、どんなに努力しても、その俳優の肉体が発散する気配のようなものを消し去ることはできない。身体の丈に合わない服を、無理に着ることはないのです。ズボンや袖丈が短いからといって、手や足の長さをつめることはできない。山本太郎には山本太郎にしかできない役というのが、もっと他にあるように思う。ただしこうしていろいろな役に挑戦できるのは、その俳優に勢いがあるからだし、こうした挑戦は勢いがあるときにしかできないものだ。山本太郎が乗りに乗っていることが、ここ数年の彼の活躍ぶりからは見て取れる。

 前3作と原作が変わったことで、物語の構成も大きく変化。単純に事件の推移を追いかけていくこれまでと違って、ひとつの事件の中から別の事件が浮上してくるという二重の構造になっているし、『完全なる飼育』というタイトルの意味も、これまでの「男が女子高生を誘拐監禁する」という方向から離れている。今回の映画でも男が女子高生を部屋に閉じ込めるのは同じなのだが、これは自分の欲望のための行動というより、傷ついた少女を保護する意味合いのほうが強いように思える。

 いずれにせよ、この人気シリーズが今後どんな方向に進化していくかは見もの。ここまできたら、旬の女優を使ってシリーズをどんどん続けていってほしい。ただしエロチック度は少しずつ低下してきているような気がするので、それをもう一度原点に戻さないとファンの支持を失ってしまうような気もする。もっとエロ度アップを! 加藤治子のオナニーシーンを見せてもしょうがないぞ!

8月30日公開予定 新宿武蔵野館(レイト)、大阪ホクテン座・他
配給:アートポート
(2003年|1時間50分|日本)
ホームページ:
http://www.shiiku4.jp/

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DVD:完全なる飼育/秘密の地下室
原作:秘密の地下室―完全なる飼育(松田美智子)
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