トランサー
霊幻警察

2003/07/09 TCC試写室
この内容だとアクション・コメディに仕立てたほうがよかったかも。
ニコラス・ツェーとスティーブン・フォンが主演。by K. Hattori

 香港警察の内部には、科学捜査では説明も解決もできない怪事件を専門に扱う「2002課」がある。その課のリーダーであり、たったひとりのメンバーでもあるヤウは、生まれつき強い霊感を持った青年。だが彼は親しくなった人たちをことごとく不幸にする、禍々しい運勢の持ち主だった。ある日彼は若い警官フォンと出会う。フォンも幽霊を見る事ができる不思議な能力の持ち主で、その能力を社会に役立てるため2002課に転属してくる。親しく振舞おうとするフォンだが、ヤウが彼に心を許せばフォンは死んでしまうだろう。かたくなに周囲に壁を作り、自分に好意を寄せる女性さえ拒絶するフォンだったが……。

 監督は『OVER SUMMER/爆裂刑察』や『スパイチーム』のウィルソン・イップ。主演はニコラス・ツェーとスティーブン・ウォンで、映画の冒頭部分にはサム・リーも出演するなど、『ジェネックス・コップ』の3人組が再共演をはたしている。ヤウの後見人チャンを演じるのは、香港映画界屈指の名脇役ロー・カーイン。この人はヤウとすごく親しいくせになぜ死なないのか……、という疑問を持たないわけでもないのだが、やや暗い物語の中で巧みにコメディリリーフを演じている。ヤウが倒れた後、ロングコート姿で颯爽と警察署に現れるくだりには笑ってしまう。東洋のサミュエル・L・ジャクソンです。ヤウに好意を寄せる看護婦役には、これが映画デビュー作だというダニエル・グラハム。表情がまだ少し固いのだが、なかなかの美形だと思う。

 幽霊が出てくる話だが、映画にホラー色はない。映画冒頭にホラー系のスパイスを効かせてあるが、サム・リーが出てくるところからそれは薄れて、アクションが全面に押し出されてくる。要するにこれは、香港映画で安上がりに『マトリックス』をやろうとうい企画なのだ。『マトリックス』ではアクロバティックなアクションシーンを成立させる前提として、仮想現実世界=マトリックスという設定を作り出した。この映画では登場人物たちのアクションを成り立たせるために、物理法則を無視して存在する幽霊という設定を使っているのだ。

 「こんなアクションシーンは観たことない!」と思わせるアイデアとしては、主人公と幽霊がプールの中で戦うシーンがある。水鬼と呼ばれる幽霊を演じたのは、シドニー・オリンピックの水泳選手から芸能界に転じたアレックス・フォン。この役者がいてこその、このシーンというわけだ。

 警察署内でヤウとフォンが戦うシーンもすごい。一方は幽霊に乗り移られてモンスターに変身し、一方は肉体を離れて幽霊になっている。こうなると、アクションはもう何でもあり。ロー・カーインが紙細工で武器を作り、次々にヤウに手渡すというアイデアが最高。手に汗握るスピーディーなアクションシーンに、こうして平気で笑いの要素を入れてくる香港映画のサービス精神には参ります。

(原題:2002 異霊霊異)

9月上旬公開予定 キネカ大森
配給:GAGAアジアグループ 宣伝協力:FREEMAN
(2001年|1時間37分|香港)
ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

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