くたばれ!ハリウッド

2003/06/27 メディアボックス試写室
パラマウントの大物プロデューサー、ロバート・エヴァンズの自作自伝映画。
有名映画の裏話も面白いが、エヴァンス本人が面白すぎ。by K. Hattori

 1960年台に倒産寸前のパラマウント映画に招かれ、『ある愛の詩』や『ゴッドファーザー』などの作品で会社を立て直した大物プロデューサー、ロバート・エヴァンスの自伝映画。原作はエヴァンス本人が書いた同名自伝。映画はその自伝そのままに、本人の自作自演、一人称のナレーションで、有名プロデューサーがたどる波乱万丈の人生を描いていく。

 30年にニューヨークで生まれたエヴァンズは俳優志望の少年時代を送るが、なかなか芽が出ないままついにその道を断念。だが皮肉なことにそれから数年後、服飾メーカーの営業マンとしてたまたま訪れたハリウッドのホテルで女優のノーマ・シアラーにスカウトされて、映画『千の顔を持つ男』に重要な役で出演するチャンスをつかむ。一躍若手スターとなったエヴァンズだったが、数本の映画に出演しただけで俳優業に見切りをつけ、プロデューサー業に転身する。若くて野心満々の彼に目をつけたのが、当時パラマウントを買収したばかりの新社長チャーリー・ブルードーン。彼の後押しでパラマウントの製作責任者になったエヴァンスは、『ローズマリーの赤ちゃん』と『ある愛の詩』の大ヒットで老舗パラマウントを倒産から救い出すのだが……。

 原題の『THE KID STAYS IN THE PICTURE』は、ヘミングウェイ原作の映画『陽はまた昇る』に出演したエヴァンスが周囲のボイコットを受けた際、プロデューサーのダリル・F・ザナックが「そのガキを映画に使い続けろ!」と現場を一喝した台詞。この台詞にしびれたエヴァンスは、この瞬間に「俺はザナックみたいなプロデューサーになりたい!」と心に決めたのだという。このタイトルはまた、首になりそうなエヴァンスが起死回生のプレゼンテーションでパラマウントに居座ったり、スキャンダルで一度は映画の世界を追われた彼が再び業界に返り咲くといった人生と見事にオーバーラップする。

 劇中にはエヴァンスが関わった映画(出演作も含む)が何本も引用されるのだが、実際のエヴァンスの動く映像はほとんど使われず、当時のスチル写真をデジタル技術で人形か紙芝居のように動かしながら9割以上のエピソードが語られている。エヴァンス本人による生々しい一人称のナレーションと、スチル写真という距離感がこの映画の命。観客はエヴァンスの巧みな話法に引き込まれながらも、スチル写真のクールな印象がその思い出話を相対化させていく。

 確かに語られている物語は、エヴァンスにとって紛れもない彼の人生の真実なのだろう。だがそれが相手の人間にとっても真実かどうかはわからない。この映画は複数の人物の意見をつき合わせて事実の裏を取るような野暮はせず、エヴァンスにとっての「真実」だけを一方的に描いていく。観客は「ホントかよ!」「そこまで言うか!」と心の中でツッコミを入れながら、エヴァンスの芸談を楽しむのだ。

(原題:THE KID STAYS IN THE PICTURE)

夏公開予定 ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ
配給:アミューズピクチャーズ
(2002年|1時間33分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.kutabare.com/

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DVD:くたばれ!ハリウッド
原作:くたばれ!ハリウッド(ロバート・エヴァンス)
原作洋書:THE KID STAYS IN THE PICTURE
サントラCD:THE KID STAYS IN THE PICTURE
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