スウェプト・アウェイ

2003/06/12 SPE試写室
映画『流されて…』をガイ・リッチー監督とマドンナがリメイク。
ラストシーンの変更は賛否両論ありそうだ。by K. Hattori

 イタリアの女流監督リナ・ウェルトミューラーが1974年に製作した映画『流されて…』を、『スナッチ』のガイ・リッチー監督が再映画化したラブコメディ。オリジナル版の『流されて…』(原題:Travolti da un insolito destino nell'azzurro mare d'agosto)は、英語題を『Swept Away』という。今回の映画は、話の流れや細部に至るまで、すべてオリジナル版を踏襲しているように見える。それどころか今回『スウェプト・アウェイ』に主演しているアドリアーノ・ジャンニーニは、『流されて…』に主演していたジャンカルロ・ジャンニーニの息子であり、マドンナのメイクは『流されて…』のマリアンジェラ・メラートを意識しているようにも見える。つまりこれは「リメイク」どころか、そっくりそのままオリジナル版のコピーと言ってもいいほどなのだ。

 ニューヨークのお金持ちカップル3組が地中海旅行にやって来る。その中でもっとも高飛車で高慢に振舞うのが、大手製薬会社の経営者夫人であるアンバーだ。彼女は船で乗客の世話をするイタリア人船員ジュゼッペ(愛称ぺぺ)をいたぶることで、自尊心を満足させ、ストレスを発散させるのだった。腹を立てるジュゼッペだが、相手は客だから我慢するしかない。ふたりの関係はまさに犬猿の仲だった。ところがある日、アンバーとジュゼッペの乗ったボートのエンジンが故障し、ふたりは無人島に流されてしまう。漁師の息子であるジュゼッペは、漁村で仕込んだ漁の腕とサバイバル技術で、あっという間に島の生活に適応してしまう。だがお嬢様育ちのアンバーは、それまで馬鹿にしていたジュゼッペに頼ることなしには、一口分の食料さえ手に入れることができないのだった。かくして船上での主従関係は、島では一気に逆転する。ジュゼッペはここぞとばかりに、アンバーをいたぶり始めるのだが……。

 脚本の構成や映像に凝った『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』に比べると、今回の『スウェプト・アウェイ』はあまりにもシンプルなドラマだ。だがこうした映画をリッチー監督に撮らせたマドンナは、彼が同系統の映画ばかり撮って小さな型にはまってしまうのはよくないと考えたのかもしれない。この映画に取り組んだことで、リッチー監督の表現の間口はずいぶん広がったと思う。
 
 オリジナル版との最大の違いはラストシーン。僕はオリジナル版の方が、人間の弱さや愛のはかなさが表現されていてよかったと思う。リメイク版はまるですれ違いメロドラマではないか。オリジナル版で僕が好きだったのは、ヒロインが主人公に「処女は捧げられないから、せめてソドミーを……」とアナルセックスをせがむシーンだったのだけれど、残念ながらこれはばっさりとカット。まぁこれは、アメリカ映画じゃ無理だよね。

(原題:Swept Away)

7月下旬公開予定 シアター・イメージフォーラム、シネマメディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給協力・宣伝:メディアボックス
(2002年|1時間29分|イギリス、アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/sweptaway/

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