向井千秋の
SOSプラネット

2003/05/23 メルシャン品川アイマックスシアター
アイマックスの三次元映像に映し出される地球環境の危機。
映像が面白すぎてメッセージが弱くなったかも。by K. Hattori

 温暖化、海洋汚染、森林伐採という3つの地球環境危機を、アイマックスの3D映像で訴えかける上映時間37分の作品。日本版ではホスト役を宇宙飛行士の向井千秋が務めているが、エンドロールによれば、オリジナル版ではウォルター・クロンカイトがナレーションをしていたようだ。監督は『エンカウンター3D』や『エイリアン・アドベンチャー』など、アイマックスの立体映画で実績を持っているベン・スタッセン。今回の映画は全部がオリジナルというわけではなく、オランダのエフタリング公園で上映されているアトラクション映像など、いくつかの既存作品がベースになっているようだ。そのせいか映像クオリティの面では多少のバラツキがあるのだが、全体としては楽しめる作品になっていると思う。

 この映画の三次元効果は驚異的。画面の中からニュッと飛び出してきた地球が、まるで自分のひざの上にプカプカ浮かんでいるように見えるし、画面の中から飛び出してきたタコの足は、こちらの鼻先をかすめてブルンブルン動き回る。地球は目の前30センチほどにまで迫り、タコの足は目の前の数センチにまで接近するのだ。こうした緻密な三次元映像は、『エンカウンター3D』を作ったベン・スタッセンならではのものかもしれない。ただしこれらはメインの映像ではなく、場面と場面をつなぐシーンに登場するものだ。

 映画のメインになっているのは、温暖化、海洋汚染、森林伐採をテーマにした、3本の三次元CG映画。地球温暖化で氷山が壊れ、シロクマの親子が生みに流されるエピソード。平和な海の楽園が、乱暴な底引き網漁によってズタズタに破壊されるお話。そして森の中で遊びに興じるサルたちの暮らしが、森林伐採で消滅してしまう物語。倒れてきた巨木を怒りのパンダが支え、大きく投げ飛ばすというオチには笑ってしまう。

 この映画は地球環境の悪化を告発し、我々みんなの手でかけがえのない地球を守ろうと訴えかける。しかし映像が面白すぎて、そのメッセージが脇に追いやられている面もある。氷のトンネルを滑り降りていくシロクマの親子の映像から、地球温暖化の危機という具体的な危険が直接脳裏にインプットされることはない。同じようなシーンを見せてくれた『アイスエイジ』という映画では、温暖化によって氷河期が終わることは、むしろ良いことであるとされているではないか。地球温暖化が悪いことだというメッセージは、少なくともこの映像からは伝わってこないと思う。

 それに比べると、海底の様子が底引き網の一撃で壊滅する2番目のエピソードはわかりやすかった。主人公のウミガメも可愛いし、魚たちの様子もよく描けていると思う。結局はこういうのが、CG映像向きのキャラクターなのかもしれない。これに比べると、3話目のサルたちは動きがぎこちなく感じた。なまじ人間に近い動きをする動物だからだろうか。

(原題:SOS PLANET)

2003年6月末公開予定 メルシャン品川アイマックスシアター
配給:さらい 宣伝:マンハッタンピープル
(2003年|37分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.sos-planet.com/

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