名探偵コナン
迷宮の十字路〈クロスロード〉

2003/05/21 ニュー東宝シネマ
劇場版『名探偵コナン』シリーズの第7作目は少し中途半端な仕上がり。
謎解きにもアクションシーンにもカタルシスがない。by K. Hattori

 劇場版『名探偵コナン』の第7弾。今回は古都京都を舞台に、8年前に姿を消した秘仏と、それを盗んだ盗賊団メンバーの連続殺人事件の謎を追う。今回の映画はいつもの「劇場版コナン」と異なり、コナンこと工藤新一の親友、服部平次が大活躍するドラマになっている。平次が小学生の頃に京都で出会った初恋の女性を探す物語と、幼馴染である遠山若葉との関係が大きくクローズアップされている。「新一と蘭」のカップルから「平次と若葉」のカップルに視点を移動させて、今回はシリーズ番外編に近い世界を狙っているようなのだ。これは劇場版でいつも繰り返されるオープニングのナレーションを、途中から平次が乗っ取ってしまうことや、クライマックスで大きな見せ場を作るのがコナンではなく平次であることからも明らかだ。

 映画に新しい視点を導入しようという作り手の意欲はわかるのだが、この映画ではそれがいささか中途半端に終わってしまったと思う。これが『名探偵コナン』という作品である以上、ドラマの視点を完全に平次と若葉に移してしまうことはできず、結局は新一と蘭の物語にも目配りをせざるを得ない。観客層のかなりの部分を占めている若い女性ファンは、新一と蘭の「すれ違いメロドラマ」を楽しみにしている面があるのだ。映画の中で「新一の帰りを待ち続ける蘭と、コナンとして蘭を見守り続ける新一」という基本パターンは守られる限り、平次と若葉の物語が大きく飛翔することはできない。物語が分裂してしまうのだ。

 盗賊団のメンバーが義経主従の名前で互いを呼び合い、全員が「義経記」を持っているという物語の発端は謎めいていて面白い。しかしこうやってミステリーの種をいろいろ撒いている割には、これらのアイデアがあまり生かされていない。「義経記」に暗号を解くヒントが隠されているのかと思ったら、別にそういうわけではないし……。とにかく今回は、殺人事件のミステリー自体がちょっと小粒なのだ。小粒なくせに謎解きの経緯がわかりにくく、種明かしのカタルシスも少ない。

 物語にいろいろなエピソードを詰め込むのは、観客に対するサービスとして好意的に評価できるものだ。でも大小さまざまなエピソードをどう整理して全体を組み立てていくかという部分で、今回の映画は弱さを持っているのではないだろうか。京都にロケハンした名所旧跡めぐりとしても、各場所が点として描かれるだけで、面としての広がりが感じられないのは残念。これは映画のトリックとも大いに関係することだけに、とても残念なことだと思う。

 脚本には細かな疑問点がいくつもあり、それが物語のスピード感をそいでいると思う。こうした細かな傷を、最後の大アクションシーンが吹き飛ばしてしまえればよかったのだが、残念ながら今回の映画のクライマックスにはそれだけの力がなかった。全体にメリハリがなく平板な印象の映画になったのはそのためだ。

2003年4月19日公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:東宝
(2003年|1時間47分|日本)
ホームページ:
http://www.conan-movie.jp/

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