リベンジャーズ・トラジディ

2003/04/24 映画美学校第1試写室
17世紀の古典戯曲を現代に翻案した愛と復讐のドラマ。
面白い。でもちょっとフックが弱いかも。by K. Hattori

 17世紀イギリスの劇作家シリル・ターナーの代表作「復讐者の悲劇」(現在はトーマス・ミドルトン作との説が有力)を、近未来のリヴァプールの物語に翻案したアレックス・コックスの最新作。町の行政と司法を牛耳る有力者に妻を殺された男が、相手の男とその家族に復讐する血なまぐさいドラマ。映画はこの古典劇からストーリーの構成だけ借りてまったく新たにドラマを作る手法をとらず、原作の筋立てや台詞をなるべく生かしながら舞台を現代に近い未来へと置き換えているようだ。つまり『ウエスト・サイド物語』の方法ではなく、バズ・ラーマンの『ロミオ+ジュリエット』の方式を取っている。

 2011年のリヴァプール。町の権力者デュークとその一族は、町のあらゆる物事を意のままに操り、意に沿わぬ者たちを平気で殺す残酷な支配者だった。デュークは町で美しい女を見つければ寝所に誘い、誘いを断られると相手を毒殺してしまう。ヴィンディチの妻グロリアーナも、デュークの誘いを断って殺された哀れな犠牲者だった。目の前で妻を失ったヴィンディチはしばらく町から離れていたが、やがて復讐に凝り固まって再びリヴァプールに現れる。彼はデュークの長男ルスリオーソに取り入って腹心となり、デューク一族の跡目相続争いに乗じて復讐の機会を狙う。

 復讐者ヴィンディチを演じるのは、コックス作品『デス&コンパス』にも出演していたクリストファー・エクルストン。宿敵デュークをデレク・ジャコビ、その長男ルスリオーソをエディ・イザードが演じている。ひどく陰惨な物語だが、この映画は全体をパンク風の意匠で包み込み、全体をファッショナブルに飾り立てている。最初のうちはちょっぴりSF風の設定と古典的復讐ドラマがうまく噛み合っていないようにも感じるが、映画を観ながらどこかでこれがピタリとツボにはまってしまうと、流麗な台詞回しやいかにも舞台劇をそのままなぞっている人物の出し入れが快感になってくる。案外この映画はビデオやDVDで繰り返し鑑賞されることで、真価を発揮する作品になるかもしれない。

 こうした作品の文体を観客に強く印象付けるため、映画導入部でキーになる場面が作られているともっとよかったかもしれない。ヴィンディチがリヴァプールに戻ってきてチンピラにからまれるというシーンは、雰囲気からすると通常のリアリズムの延長にあるように思う。これによって、その後しばらくは映画の印象がチグハグになってしまうのだ。例えば『ウエスト・サイド物語』は導入部をバレエで通して、観客に作品の世界観を十分に納得させた上で物語に入っていった。『リベンジャーズ・トラジディ』も、それに匹敵する何らかの工夫があれば、観客をもっと早い段階でドラマに引っ張りこめただろう。
 
 もっともここで言う「観客」とは僕個人のことなので、他の人はもっとすんなり物語に入っている可能性もあるけれどね。

(原題:Revengers Tragedy)

2003年9月公開予定 ユーロスペース
配給:ケイブルホーグ
(2002年|1時間50分|イギリス)
ホームページ:
http://www.cablehogue.co.jp/revengers/index2.html

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DVD:リベンジャーズ・トラジディ
サントラCD:Revengers Tragedy
原作戯曲:復讐者の悲劇・無神論者の悲劇
原作洋書:Revengers Tragedy
関連DVD:アレックス・コックス
関連DVD:クリストファー・エクルストン
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関連DVD:エディ・イザード

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