魔界転生

2003/04/15 東映第1試写室
山田風太郎の代表作を平山秀幸監督が最新技術を使ってリメイク。
深作版のエネルギーはないが面白い場面も多い。by K. Hattori

 山田風太郎の数多い伝奇時代小説の中でも特に人気の高い同名小説を、窪塚洋介と佐藤浩市主演で映画化した作品。今から22年前、千葉真一と沢田研二主演で深作欣二監督が撮った映画のリメイクにあたる。僕は前回の映画の内容をあまり覚えていないのだが、それでも今回はずいぶんと様子が違っているように感じた。

 島原の乱で徳川軍に攻め滅ぼされた天草四郎は、十数年後に魔界衆のひとりとして黄泉から復活。紀州尾張家の徳川頼宣をたきつけて幕府転覆の野望を植えつけると共に、荒木又右衛門、宝蔵院胤舜、宮本武蔵などの剣豪や豪傑を次々に蘇らせて天下に再び戦乱の世が訪れることを画策する。だが柳生の郷から和歌山に向かった娘たちがただならぬ妖術の犠牲になっていることを知った柳生十兵衛は、真相を探る中で否応なしに天草四郎たち魔界衆と戦うことになる。

 映画冒頭にある島原の乱の描写は迫力があり、その後の映画にも大いに期待を抱かせるものだ。天草四郎を演じる窪塚洋介が、ちゃんと少年に見えるところもいい。(沢田研二は妖艶でなかなかハマリ役ではあったのだけれど、どう見ても少年とは呼べなかった。)衣装やメイク、特撮技術なども安っぽさがなく、品よくきちんとひとつの世界を作り上げている。チャンバラシーンもスピード感があって面白い。

 しかし物語にはいささか弱さも感じる。物語の原動力になっているのは、天草四郎の江戸幕府や徳川家に対する恨みらしい。だとすればその恨みの大きさを、映画の冒頭で観客にきちんと伝えておかなければならない。また彼らがいかにして死を逃れ復活したのか、そのカラクリについても何らかの説明はほしかった。柳生十兵衛が魔界衆の行動を阻もうとする理由も、今回の映画ではちょっと弱い。正義と悪の戦いという講談調の二元論世界を廃したまではよかったが、その後に十兵衛の行動を支える動機がない。魔界衆たちが「強さへの執着」で蘇ったのだとすれば、十兵衛もまた「強さへの執着」によって己を磨く男として描けばよかったのに……。

 チャンバラシーンは過去のいろいろな映画を研究したようで、見ていてそれなりにワクワクドキドキさせられた。今は昔と違って、チャンバラで一流の個人技を見られる時代じゃない。それでも時折「ほほ〜」と感心させる殺陣を見せてくれるのだから大したものだ。もっともこういうのは、往年の時代劇ファンの思い入れがあるのかもしれない。例えばラストシーンに『座頭市物語』の最後の立ち回りの面影を見て喜ぶとか、頼宣が森で四郎たちに出会うシーンに『蜘蛛巣城』へのオマージュを感じるとか、そういうこと。

 魔界衆の中では古田新太の胤舜と、中村嘉葎雄の但馬守がよかった。でも荒木又右衛門は小柄で筋肉質の俳優の方が佐藤浩市とのコントラストが作れてよかったと思うし、長塚京三の武蔵はちょっと貫禄不足かな……。

2003年4月26日公開予定 全国東映系
配給:東映
(2003年|1時間46分|日本)
ホームページ:
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