NOEL

2003/03/25 映画美学校第2試写室
沖縄を舞台にした、ある殺し屋組織についての物語。
コメディらしいのだが、少しも笑えない。by K. Hattori

 『20世紀ノスタルジア』や『月のあかり』『RED HARP BLUES』などの作品にプロデューサーとして関わってきた梨木友徳が、沖縄で撮影した脚本・監督デビュー作。La'cryma ChristiのTAKAや、「仮面ライダー龍騎」の須賀貴匡、『ナビィの恋』や「ちゅらさん」の平良とみなど、出演者の顔ぶれはそれなりに豪華に見えるが、映画自体は何が言いたいのかさっぱりわからないヘンテコなものになっている。ビデオ撮りの低予算映画だけれど、画面だけでなく、物語自体もきわめて安っぽい。どうやらコメディのつもりらしいのだが、観ていても少しも笑えないのだ。とにかく最後まで笑えない。少なくとも僕にとっては面白くもおかしくもない映画だった。

 タイトルの『NOEL』というのは、辞書を引けば「クリスマス」という意味が載っている。ところがこの映画ではそんな言葉本来の意味をすっ飛ばして、この言葉にまったく別の意味を付加する。それは人が誰でも持つ、大切な何かだ。それは思い出であり、記念の品であり、持つ人を勇気づけ、温かい気持ちにさせてくれる有形無形の存在。なぜそれが「NOEL」と呼ばれなければならないのか、映画の中では少しも説明していない。クリスマスとどう関係があるの? 伊勢谷友介の『カクト』もそうだったけれど、映画のタイトルという表看板に、意味不明の言葉を付けることにどんな効果があるのだろう。僕にはどうしても腑に落ちない。(※)

 舞台は沖縄。主人公はそこで一人暮らしをしている老婆かおるだ。彼女は首に、小さな写真を貼り付けた煎餅をぶら下げている。写真は戦争に行ったまま返ってこなかった恋人。やがて彼女の前に、写真の恋人そっくりの青年みかさが現れる。じつは彼は殺し屋。彼はかおるが恨みに思っている相手を殺すという。その相手とは、かおるが戦地に恋人を送り出す際、手渡そうとした煎餅を食べてしまった幼馴染のエイ。その出来事から何十年たっても、かおるの恨みは消えることがない。「どうせなら自分の手でエイを殺したい!」というかおるは、みかさに弟子入りして殺し屋修行を始める。だがそんなふたりを殺そうと狙う、もうひとつの影があった。その相手とは……。

 監督が狙ったのは、老婆を主人公にした『レオン』ということらしい。映画冒頭で漫才コンビ中川家の弟(中川礼二)が殺し屋に襲撃されるシーンは、まるっきり『レオン』からの引用。かおるがみかさから射撃の講習を受けるシーンも、レオンがマチルダにライフルの使い方を教えるシーンを踏襲している。映画の最後には観葉植物を庭に植えるシーンまであって、完全に『レオン』を踏まえていることを隠そうとしない。もっともここでは、新しい生活に踏み出していく少女の役柄が、ヒロインのかおるから、近所で暮らす少女へとすりかえられてしまうのだ。どうせなら最後まで徹底すればいいのに。

※数人の読者から、『NOEL』というタイトルが『LEON』の逆読みなのではないかとの指摘があり、「ああ、なるほど!」と今頃ようやく気づきました。ご指摘くださった読者には感謝です。(03/03/27)

2003年4月26日公開予定 テアトル池袋
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、オフィス シー・エー プランニング
宣伝:オフィス シー・エー プランニング、スキップ
(2003年|1時間32分|日本)
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