ブリー

2003/03/13 メディアボックス試写室
実在の殺人事件をラリー・クラークが映画化した青春映画。
ブラッド・レンフロの上手さは相変わらずだ。by K. Hattori

 1993年にフロリダで起きた高校生殺人事件を、『KIDS』のラリー・クラーク監督が映画化。原作は事件のルポルタージュ「なぜ、いじめっ子は殺されたのか?」。タイトルの『ブリー』は「いじめっ子」という意味だ。主演は『依頼人』のブラッド・レンフロ。殺される高校生を、『イン・ザ・ベッドルーム』でも殺され役だったニック・スタールが演じている。ただし同じ殺人被害者でも、『イン・ザ〜』の彼は好青年。今回の役は最低のクズ野郎だ。撮影は実際に事件があった南フロリダの町で行われたという。

 マーティ・プッチオとボビー・ケントは幼馴染の親友同士だ。ふたりは子供のころから近所で暮らし、ボビーが兄貴分になって下っ端のマーティを小突き回す関係がずっと続いている。ある日ふたりは、リサとアリという2人組の女の子をナンパする。アリにとってボビーとの関係はただのお遊び。だがリサとマーティは結構真剣に付き合い始めた。それでもマーティはボビーの支配下から逃れられない。リサにとっても、ボビーに殴られて半べそをかいている恋人の姿は見るに忍びない。「いったいどうするつもり?」と訊ねるリサ。「もう殺すしかないさ」と答えるマーティ。その答えにリサは「そうね、私もそうするのが一番だと思うわ」と大きくうなずく。こうしてマーティとリサを中心にした、ボビー殺害計画が進められることになる。

 主人公のマーティは当時16歳。他の少年少女たちも似たような年齢だ。最終的にボビー殺害には7人の人間が加わるのだが、彼らがいとも簡単に殺人という重大犯罪に加担していく様子は、「おいおい、本当かよ!」と思うくらいあっさりしたものだ。彼らは「新しいドラッグを試さない?」という問いに「YES」と答えるのと同じ気軽さで、殺人への協力を約束する。「相手は最低の男だ」とさえ言われれば、たとえ面識がなくても相手を殺す気になってしまう。映画の中ではむごたらしい殺人シーンも描かれているが、それよりも僕が衝撃を受けたのは、殺人というものをごく簡単に考え、あっという間に後戻りできない地点まで押しやられてしまう少年少女たちの姿だった。

 ボビーにいじめ抜かれても、彼から離れることができないマーティ。マーティをいじめながらも、「将来会社の経営者になったらマーティを雇いたい」と父親に告白するボビー。ふたりは互いに意識していないようだが、相手に対して強い執着心を持っている。それは無意識の領域に封印された、同性愛的な絆かもしれない。特にボビーにはそれが強く感じられる。自分たちが作った少年ヌードのビデオを得意気に見せるシーンがある。同性愛のビデオを見ながらアリをレイプするシーンもある。彼がマーティの恋人であるリサを彼の目の前で犯すのも、マーティと関係を持ちたいという無意識の願望からかもしれない。ふたりの絆は強すぎて、それを分けるのは「死」しかなかったのだ。

(原題:BULLY)

2003年5月公開予定 シネセゾン渋谷
配給:アミューズピクチャーズ
(2001年|1時間51分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.bully.jp/

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DVD:ブリー
原作:なぜ、いじめっ子は殺されたのか?(ジム・シュッツ)
原作洋書:Bully: A True Story of High School Revenge (Jim Schutze)
関連:ラリー・クラーク監督
関連DVD:ブラッド・レンフロ
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関連DVD:KIDS(ラリー・クラーク)
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