わたしのグランパ

2003/03/05 東映第1試写室
筒井康隆の同名小説を菅原文太主演で映画化したファンタジー。
ヒロインを演じた石原ひとみがチャーミング。by K. Hattori

 筒井康隆の同名小説を、東陽一監督が脚色・監督したファンタジードラマ。中学1年生の五代珠子は、両親と祖母の4人暮らし。そこにある日、13年もの間刑務所に入っていた祖父・謙三が戻ってくることになる。祖母は「あの人の顔見るの嫌だから」と家を出ていってしまった。なんでも祖父は13年前、人を殺して刑務所に入ったのだという。「正義感からやったことだよ。相手が悪い奴だったんだ」と説明する父。いった過去に何があったのだろう。やがて家に戻ってきた祖父は一見じつに穏やかそうな人だが、度胸のすわり方は半端ではなく、どこかしら堅気ではないような雰囲気も漂う。だがそんな祖父の周囲には、いつしかヤクザたちの影。じつは13年前、謙三はこのヤクザたち相手にとんでもない事件を起こしていたのだった……。

 ムショ帰りの五代謙三を演じているのは菅原文太。どことなく浮世離れして見えるこの男が現れたことで、少し冷めかけていた五代家の夫婦仲が修復し、珠子の中学で起きているイジメや校内暴力がなくなり、ヤクザたちもおとなしくなってしまう。映画の中ではそれなりの因果関係が説明されてはいるが、現実にはこんなことあり得ない話。作り手もそれを十分承知していて、映画にはファンタジーの味付けがされている。五代謙三は町に現れた妖精か天使のような人物なのだ。普通に歩いていても地上から10センチくらい浮き上がっているような、生身のリアリティを感じさせない人物。

 謙三を演じている菅原文太の台詞も動作も、周囲の人々の芝居とはテンポやリズムが微妙に違えてある。ヒロインの珠子を演じた石原さとみ、行きつけの店の若いマスターを演じた浅野忠信、五代家の家族を演じる平田満、宮崎美子、波乃久里子などが映画的なリアリズムで芝居をしているのに対し、菅原文他はそこから少し距離を置いた芝居の組み立てをしている。同系の演技をしているのが、ライバルのヤクザを演じた伊武雅刀かもしれない。このふたりが出演しているシーンでは、映画の中に別種の風が吹く。終盤で光石研にもヘンテコな芝居をさせて、そのままでは殺伐とした雰囲気になりそうなクライマックスをおとぎ話の世界に作り替えてしまうのだ。

 刑務所から出所したばかりの元殺人犯を主人公にしているくせに、物語はのどかでほのぼのとした雰囲気に包まれている。菅原文太が演じるゴダケンさんは人々に愛されているし、ヤクザたちとのやり取りもガキ大将同士の意地の張り合いのように見える。だから映画の最後に、組長が再登場するシーンを観客が微笑ましく受け入れることができるのだ。

 珠子を演じた石原さとみは、本作がデビュー作という新人。幼い少女が謙三との関わりの中で成長していく姿を、初々しくも凛々しく演じる様子は今後にも期待ができそう。最後に見せるちょっと大人びた表情もいいなぁ。

2003年4月5日公開予定 全国ロードショー
配給:東映
(2003年|1時間53分|日本)
ホームページ:
http://grandpa.jp/

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DVD:わたしのグランパ
原作:わたしのグランパ(筒井康隆)
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