GUNS & TALKS
ガン&トークス

2003/02/26 映画美学校第2試写室
プロの殺し屋4人組と彼らを追う敏腕検察官の駆け引きを描く。
基礎工事ができていない脚本なのかなぁ……。by K. Hattori

 息のあった4人の若い殺し屋たちを主人公にした、ユーモラスでコミカルなアクション映画。タランティーノの『レザボア・ドッグス』で銀行強盗たちが無駄話をしているシーンがあるが、あれをもっとソフトタッチにして、最後までハードにならない感じ。主演の4人がそれぞれ個性的なイケメン揃いで、金で殺しを請け負うくせに妙に情にもろかったりするあたりが、ユニークといえばユニークなのだろう。しかしこうした設定が、殺し屋という職業と最後までうまく噛み合っていないようにも思う。

 おそらくこの世の中には、小説や映画のようなプロの殺し屋も存在するのだろう。でもそんな人種と普通の人はお目にかかったことがないから、映画の中ではあくまでもそれらしく描かれていれば十分だ。しかしこの映画に登場する殺し屋には、残念ながら大切な「それらしさ」がない。もちろんこの映画は一般に考えられがちな殺し屋のステレオタイプをぶち壊すのが目的だから、殺し屋たちが仲良く和気藹々と暮らしていたり、へんに涙もろかったり、英語がぜんぜんわからなかったり、情にもろかったり惚れっぽかったりしても構わない。そんなことは全然物語の本質とは別問題だ。でも最低限、殺し屋という仕事がなぜ成り立つのか、依頼や報酬の支払い方法はどうなっているのか、メンバーたちは金をもらって人を殺すという仕事をどう考えているのかなどは、簡単にでもいいから触れておいてくれないと戸惑う。

 映画の中では依頼が直接の面談によって行なわれるような説明もあれば、依頼人と会うことなしに郵便で書類や報酬が送られて来るという説明もある。暗殺のために理由を説明することもあれば、理由を不問にして金さえあればそれでよいという描写もある。こうしてその場その場でいろいろな説明が出てきてしまうと、映画を観ている側は「ご都合主義」と感じるのだ。物語がどんなに飛んだり跳ねたりしていようと、ベースになる世界は揺るがないでいてほしい。足下がしっかりしてこそ、思い切り飛んだり跳ねたりできるようになるのではないだろうか。

 ターゲットに惚れて殺せなくなってしまう殺し屋がいたっていい。でもその時は、なぜ彼がその時に限ってそんな気持ちになったのかを、きちんと説明してほしい。殺し屋を見逃す検察官がいたっていい。でも法による正義を信条とする検察官が、なぜその時だけそんな気分になったのかを説明してほしい。観客は殺し屋4人組が気のいい奴らだということを最初から知っているけれど、検察官はそれをいつどんな方法で知り得たのだろう。こうしたベーシックな部分については、やはり脚本段階で書き込んでおくべきだろう。監督のチャン・ジンは『リメンバー・ミー』の脚本家だが、今回の仕事はいささか粗っぽすぎるように思う。粗くても勢いやテンポで見せる方法があるけれど、この監督にはそこまでのパワーがないのかも。

(英題:GUNS & TALKS)

2003年3月中旬公開予定 新宿武蔵野館
配給:グルーヴコーポレーション
(2001年|2時間1分|韓国)
ホームページ:
http://www.groove.or.jp/movies/killers/

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DVD:ガン&トークス
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